[解題]
文体の長閑さは意識したものながら、脳を漬けるという着想自体は楡井ズムの枠をはみ出していない。だって脳を漬けるんですよ。幾らでもエログロに出来るじゃない。それをこんな形にしたのはそれが最適だからという一言に尽きるが、『短編』向きに書いたと言ってもいいぐらいのアンチユニークさなので冒険の甲斐があったということだ。
さて、脳とは人間の最も身近にありながら最も研究の追いついていない部位になる。この作品こそ無駄なことを考えず楽しんでもらいたいのだが、脳を俯瞰する・脳を漬ける=発酵させるetc.ストーリー上の論理で遊びながら読むと、ドグラ・マグラ的な恍惚に浸れるのではないかと思う。
心残りはアナザーエンドの存在である。本作をはじめとして初期の作品はケータイで執筆している。大体の作品、その最終稿はすべてPCに移動済みだが、アナザーエンド部分のみケータイ(しかも故障したもの)の中に封印されたままである。今回を機会にお披露目したかったが、そのためにはauショップに行かなければならないので、アナザーエンドよりもこっちの方が断然面白いとだけ付加して逃げる。いずれまたの機会に。
http://r0bot21th.edoblog.net/Entry/47/『脳を漬ける』