手のひらの海に、汐はまた満ちる。それまで待とう、死ぬのは。(皆川博子『ひき潮』より) ―――吉川楡井の狂おしき創作ブログ。

-週刊 楡井ズム-

   
カテゴリー「作品:【千文字の饗宴】蒼」の記事一覧

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『斜陽』

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『機械仕掛け DE コンニチワ』

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『さらば、いとしき火星床の軍隊よ』

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いまいち自分でもどういう物語なのかよく分からないってのが正直なところで、アスベストへの恐怖(時代後れだが)のリソースであったり、喫煙者としての苦悩であったり、小人のイメージ先行であったり、『火星のプリンセス』映画化記念であったり、もう何がなんだか……。
なお、《短編》に投稿したものは1000字きっかりだが、こちらはその際に削った部分を付け加えている。なくてもいいのだけれど、割と気に入っている箇所なのでその思い入れを優先したい。






『夜蛾の恋』

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心に残った小説をイメージして小説を書くことはない。むしろ映画や音楽、漫画からイメージを引き継いで書くことが多い。本作の場合、大越孝太郎の『月喰ウ蟲』が源にある。俺の趣味にはエログロとロマンチシズムが同居しているのだが、そのど真ん中を抉られた傑作である。
本作でエログロを踏襲しなかったのは、同時にKAGAYA的な夜の情景美術に気持ちを引っ張られたからだろう。
式貴士『天虫花』を読了後に書いた『爛夜花』(『煌夜花』に改題予定)を参照すると一目瞭然だが、やはりこれらエログロマンチシズムは潜在的に眠っていた俺の財産なのだと気がつく。






『とうにピシピシは壊れて』

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作者にとっての現実、最も重きは実母の病のことであろう。直視しなければならない現実であり、描くべき命題のひとつでもある。本作を執筆した当時はちょうど実母が数年ぶりに入院したこともあり、俺もナーバスになっていたのだろう。
いつか描くであろうこの苦しみを、磨き上げる前の原石。習作の域は出ず、いま読み返せば単に不謹慎な気もするが、熱量だけは感じる。『枝折の怪』では描けなかった俺の執筆動機、むしろ執筆の免罪符であるとも言えるが、この熱量は忘れてはいけないと自戒する。





『書物と真空の海』

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パッケージ化なる技術は、安直だったかもしれない。これを読書媒体の変遷、いわゆる電子書籍への懸念と受け取る向きは否定しないものの、単に恋愛の真髄は個人の尊重が要であるといいたいだけだったのかも。読書とは文章を読むことだけではなく、内容を理解することが重要であり、それはまた恋愛の作法にも言えることだ。大事なのは、心を読むことではなく、心を理解すること、ただし、あくまで他者であることを忘れてはならない。恋人は他者であり、恋人の人生は自分の物語とは別の物語なのである。
また、少女を小物のなかに閉じ込めたい願望があるのか、『“魔美ちゃん”のビー玉』にも相通じるイメージ。
なお地震による本棚の倒壊、図書館という舞台は、かつて着想していたミステリ小説からの引用であることを、自身への備忘録のために書き添えておく。






『アトロフィエ・インフィニエ』

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『夢視る機械』と『夜想の水晶』という2つの作品を構想していて、どちらかに傾くかと思ったらどちらとも異なる形に収まってしまった。映画『タイムマシン』の1シーンを網膜に、否、硝子の脳髄に焼き付けた結果。
『ガラスの脳』といえば手塚治虫の短篇漫画であり、くず折れたコンピューターのイメージは浦沢直樹『PLUTO』に登場するブラウ1589(原典でいうところの青騎士)なので、漫画の神様の血脈が変なところで繋がっている模様。
まさに蜘蛛の巣が張った古式の脳髄、とは、情報が錯綜するwebのことであり、あるいは俺が備え持つ趣向――華麗なる脳内都市のことなのだ。







『エコーエコー』

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本作についてはここでなにかを語るより、こちらを参考にしてもらった方がいい。
また、解説でも言及している曲の歌詞はこちら。特に一番の歌詞はそのまんまですね。そこまで意識しているつもりはなかった(というか歌詞をちゃんと読んだのはこれが初めて)なので自分でも驚き。
まさしく自身の心中と対話した結果、生まれた物語なのかもしれない。

私の心の不思議さは 貴方を静かに思い出す時 銀河とおなじ渦を巻く

 海援隊『私のなかの銀河』より






『ミサイルはいつも大漁』

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着想こそすんなり受け入れられたものの、文章の運びについてはかなりの苦肉の策で出来上がった一篇。真に心残りはミサイルの生態について描けなかった部分であり、単なる父と子の継承の物語で留まってしまったこと。これも1000文字には過重だったのだろう。ごきゅごきゅ、は気に入っている。






『クリトリスの摩耗』

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異種間交配を先鋭化させるべく、タイトルを見てお分かりの通り非常に下衆なアプローチを取っている。描写が観念的でイメージとして捉えづらいこと、段落ごとの時制が飛躍的であることなど、親切ではないのが残念なところ。
『+1』と同じくあえて対する存在に具体的な造形を用いなかったのは、前者は人でなきものを不明瞭に描くべきであり、後者は生物学的な縛りを超越するべきと考えた故である。




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