手のひらの海に、汐はまた満ちる。それまで待とう、死ぬのは。(皆川博子『ひき潮』より) ―――吉川楡井の狂おしき創作ブログ。

-週刊 楡井ズム-

   
カテゴリー「作品:【千文字の饗宴】蒼」の記事一覧

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『+1』

[解題]
アンチ『冷たい方程式』というか、SFによくあるパターンを裏返した結構。ネーミングを含め、千文字の饗宴内では『融解生活者の殺人』の元になっている東宝映画であったり、『トワイライト・ゾーン』の元になっている古きよき似非SFドラマに共通している。




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『パラレル・タイムズ』

[解題]
世界は幾つも分岐する。では逆に、別々の世界が重なり合わさったらどうなるか。本作の目的はそれである。インタビューを介して人物を描いていく結構は、執筆当時『第9地区』という映画に感化されたからだ。
インタビューの連関によって紡がれたといえば、1000文字小説では『体液を切り売りする子ら』という変てこりんな話もあるが、あちらがインタビューを行っていること自体に作中論理の手順を示しているのと違い、こちらではパラレルというモチーフを意図したものとなる。どちらも最後に発言者の不在が明かされるところなどは、この手の話にしては常套手段に過ぎない。





【千文字の饗宴】空想の章 ver.1.5 :目次

暫定


【千文字の饗宴】空想の章:目次

空想の世界へようこそ
千文字で彩られる今宵の饗宴は、センス・オヴ・ワンダー……
広大な瑠璃色の物語

世界の終末から始まり、電脳怪談、不可視の存在、ロボット、タイムトラベル……
SFという言葉は、サイエンス=フィクションとサイエンス=ファンタジー、
2つの意味を包含しておりますが
果たしてここに鏤められた物語は、理に落ちるか、泡沫と消えるか
空想と創造が現実を侵食していく、その瞬間を差しあげます


『銀河の夏、ニッポンの夏』

[解題]
蒼《空想の章》、堂々たる締めの作品は本作。
身内と作品のネタについて意見を交わしているなかで生まれた思い付きを作品にするとこうなる。紆余曲折はありながらも、一般受けを目指した結果、無事《短編》でも優勝することができた。
モデルは、煙草のヤニで真っ黒くなりながら今もなお自室で回り続けてくれている扇風機。作中の品番もそれに倣っている。 ただひとつ齟齬を明かせば、角度調節可能なため、必ずしも扇風機が“肯くことを知らない”わけではないということである。

なお、本作には続編がある。『銀河の夏、ニッポンの夏ふたたび』と『三たび銀河の夏、ニッポンの夏』というのだが公開の予定はまだない。




『悪魔の海』

[解題]
自身の創造/想像というものを客観視しつつ、内部からフォーカスしていくことでまたひとつの物語が生まれる。個人の想像が系譜を成せば、それもまたひとつの神話となることを体現して、既存の物語の枠や時代を超越して一挙に集うことも可能。模倣と引用を繰り返し、ごちゃ混ぜになったフレスコ画を文章で描くとこんな感じになるのだそうだ。




『やがて君は時の彼方に』

[解題]
筒井康隆『時をかける少女』への愛を語れば、紙幅が尽きてしまう。細田守アニメ版『時をかける少女』のヒットが記憶に新しいが、アニメ版で『時かけ』を知った少年少女が原作にまで踏み込むと、その時代性やらアニメとの乖離に面食らうことであろう。しかし、そのノスタルジーでさえ作品の良き味になっていることそのものが『時かけ』を『時かけ』たらしめ、名作と呼ばれる所以であることを知って欲しい。 ここからファンタジー性を求め、『たんぽぽ娘』や『ジェニーの肖像』など海外の名作に惹かれていくのもよし、SF性であれば、小林泰三『海を見る人』や『酔歩する男』などに嵌っていくのもよし。 SFとは、あったはずのものがいまはない、けれどいつかはまた出会える、そんな消失感から生まれる。




『青のサーカス』

[解題]
どこかでみた同名の絵画をモチーフに、とよくよく調べれば、それは天才シャガールの絵で、しかもタイトルは『青いサーカス』であった。絵画に描かれたものをモチーフに引用するよりかインスピレーション(それも“どこかでみた”当時の)を大事にしようと決めた。なので必ずしも『青いサーカス』がモチーフとはいえない。
作風としては、長野まゆみ風の硬質なファンタジーを目指したが、なにぶん文字が少ないために発揮できぬまま息切れした覚えがある。
ロボットテーマの『ハカイ者』では描ききれなかったロボットたる魅力を表現した。オマージュでもなんでもないが、ロボットを描くにあたり、ラーメンズ『ATOM』の中の一編『アトムより』に登場するノスというキャラクターを忘れずにはいられない。そんな心情も書き添えておく。




『ハカイ者』

[解題]
テーマに対して別角度から攻めるという手段は宣戦布告でありながら、一種の逃げであるように思う。 先鋭化した技術、極端化された人造物の変遷に恐怖を抱くのは、フランケンシュタインコンプレックスという名の驕りである。あるいは、殺人の意義がやがては人体損壊というアプローチでもって尊厳を失わせることに成功している昨今のホラー事情への皮肉でもある。 破壊/破戒とは、逃げである。




『哀しき玩具』

[解題]
例によって『悲しき玩具』とは関係ない。加藤元浩『ロケットマン』の影響もあったり、ダイナマイトにまつわる悲劇やギヨタンからのインスパイアであったり、どこをどうとっても俺の作品だなと分かる。
それを意識した訳ではないが、作中人物の姓をあれにしたのは、旧ペンネーム由来でもあれば、『悲しき玩具』への敬礼でもある。




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