そそり立つ光の柱は暴力的だ。
硝子ごしに感じるプラズマの熱と眩きは、人間へ嘔吐きを誘うに充分すぎて、研究員たちは足許を探るように肩を下ろしている。そんな中で、わたしは石塔の如く、一寸の身震いも奪われて、伸び上がる光の柱を見詰めていた。
柱に囲まれて、電気を通さぬ原始銀の長方形を刳り貫き綿毛布を敷いた、この時代、この上なく高貴な揺り篭が置かれている。寝そべる赤子の頬は、瞬間に七色に、瞬間に切れたランプのシェードのように、色彩と明暗を変え、ああ、この子は人間ではないのだなと母親になる女に改めて痛感させる。
この時間が過ぎればきっとインタビュアーに迫られるだろう。如何なる気持ちか、間際に吐露しなければならないという緊張もあった。不謹慎が過ぎると思う。
大半の人間は――おもにメディアに顔を出すものたちは――わたしに罵声を浴びせるだろう。例の団体の影響は凄まじく、わたしと同じ境遇の女たちは、気を偽って生活しなければならない世の中だ。悪魔の眷族だと、蔑まれる。
五本柱の屋根は、銀の円盤。彼らは触手や触覚を持つような、刷り込まれた通りの姿ではなかった。意思を持つ電気体は、地球上で過ごすにはあまりに強力で、円盤が成層圏を越えた瞬間から、暗澹に包まれた都市を眺めると理解は容易い。
見るもおぞましき星間受精。見かけだけ人間の形を成した赤子は、首を僅かに動かして、プラズマに埋もれた地球の大気を感じ取った。母親を探しているのかもしれない。
あと七百パーセク。窓に寄ったわたしを技術者が制止した。
あと二百パーセク。
時を待ちながら、わたしは下腹部を押さえていた。失ったと思っていた疼痛がここに来て蘇った気がした。まだ体は機能を終えていない、そんな気さえした。けれども、それはない。皺の浮いた右手の甲を見据えれば、重ねた齢は無視できないのだから。
裸体を社会に曝し、仕事と称して数多の男と目合っていたあの頃、まさかこんな将来を迎えるだなんて想像もしなかったけれど、後悔はしない。磨り減らした女性性の内側に残ったのは母性だった。高齢化、孤独死。老女の住み場がない世の中に、望むのはただ己の手でわが子を抱くこと。
これまでの人生もこの覚悟も、蔑視されると分かっているから、わたしは幸福のまま宇宙に出られる。重力から解き放たれて、人外の赤子とともに第二の人生を送るのだ。
まぁ、なんてかわいいわたしの赤ちゃん。
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