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 手のひらの海に、汐はまた満ちる。それまで待とう、死ぬのは。(皆川博子『ひき潮』より) ―――吉川楡井の狂おしき創作ブログ。

-週刊 楡井ズム-

   

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『空飛ぶマタドール』

[解題]
本作、『哀しき玩具』、『即興詩人』、『三日月のはしご』、『鴉の末裔』……。
これらは随分前にタイトルと着想だけが頭にあって、いつか掌編にしようと画策していたものたち。所詮、一発ネタだから1000文字にしようということで今の形に。けれども思っていたものと異なる様相になるのは当然で、中でも本作はマイナスな方向に傾いている。
つまりは、テキトー。
より都市伝説的に、X-FILE的になるものと踏んでいたが、何がどうしてこうなったのかはそのときのテンションだろう。それ以上語っても、本作の世界は広がらない。それもまたいいところ。


 我先にという意気が重なって、同じタイミングに告白したのがまずかった。
「じゃあ、先に見つけた方と付き合ってあげる」
リリーがそんなこと言うから、ぼくとメイスは否が応でも“空飛ぶマタドール”を見つけなくてはならなくなった。話には聞くけど、どこをどう探せばいいのかさえ検討もつかないぼくは色々考えて、いいことを思いついたんだ。見つけたと嘘をつく。いや、別のものをそれだと偽る。それも却下。ぼくが思いついたのは、リリーをその気にさせちゃえばいい、ただそれだけだ。抜け駆けは卑怯だけど、都市伝説を探し当てるくらいなら手っ取り早い。
校舎からリリーが出てくるのを待って、偶然を装って一緒に帰る。深い森に囲まれた一本道は夕暮れで薄暗くなっていた。
「どう。捜査は順調?」
「まあね。今夜あたり出るんじゃないかと思ってるんだけど」
「ホントにっ? どこに出るの」
「たぶん、あっちかな。空のあそこら辺」
ボクは一際輝く一番星を指差した。途端にリリーは目をきらきらさせた。マタドール以外のことで気を引こうとしていたのにしくじった。これでは見つけたも同然、彼女の期待はぐんと伸びる。でももし見つけられなかったら……。むしろ逆効果だ。どうする、どうはぐらかそう。「あ、あれかな」
リリーが指差したのは、相変わらずの一番星だった。けれど様子がおかしい。少しずつそれは大きくなっていく。一瞬、ものすごい光がぼくらの視界を奪った。気付かない内に目をつむっていたぼくの腕を誰かが小突いた。
「見つけたっ。すごいよ何あれっ」
リリーの声で瞼を開けると、円錐状の光の中央に浮かび上がるホルスタインを見つけた。その周囲を薄ぼんやりとした背の高いマタドールが赤い布を振っている。光を放射しているのは銀色の大きな円盤で、ホルスタインとマタドールは円盤の底面に開いた穴へと吸い込まれていった。サーチライトがぼくらを照らすと、耳を通り越して、頭に直接声が聞こえてくる。オマエラハチキュージンカ、オロカナチキュージン、コノホシ、アトニジカンデホロボスゾ……。円盤は霞のように姿を消した。
「見た! 空飛ぶマタドール見たわっ。あなたの勝ちねっ」
リリーがぼくの頬にキスをした。あのマタドールは何だったのか。それよりもっと大事なことがある気もしたけど、頬の熱りでどうでもよくなった。ぼくはリリーと手を繋ぎながら、明日悔しがるメイスの顔を思い浮かべて家路を辿る。
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