[解題]
『血の花嫁』、『皿の花嫁』にしろ実録猟奇殺人に、創作者として以上の興味をもっていると白状しよう。とはいえそれは珍奇なことではないのだと思う。普段、この手の創作を毛嫌いする人間だってニュースには飛びつくことだってままあるのだ。
「貌」というタイトルには、物事の表面という意味を宿らせている。だが、それがすべてという考えもある。
それはそれとして、貌は時間や出来事の干渉を受けて変わっていくもののメタファーでもある。つまりは事件の表層・真相をほのめかす。さらには前述したような自然発生的なものばかりではなく、何者かによって殴打された場合、見るも無残に変「貌」してしまう。その人が誰なのか判別もつかないぐらいに。貌とは、そういうものなのである。
さて、本作については背景の所在から、これ以上のことを語るのは避けたい。
それは曲がりなりにも一般住民として生活している自分への、最低限の礼儀だ。これを度外視してしまったら、ほんとうに創作におぼれ人間とやらをやめなければなるまい。それはそれでいいことだろうと、さらにもう一人の自分がほざいているが所詮は我が内心で交わし合うやり取りである。胸骨の裏に閉じ込め、墓場まで持っていこう。
それが、数多いる被害者への、最低限の礼儀だ。
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