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 手のひらの海に、汐はまた満ちる。それまで待とう、死ぬのは。(皆川博子『ひき潮』より) ―――吉川楡井の狂おしき創作ブログ。

-週刊 楡井ズム-

   

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H23.10.29 書店にて



Q.E.D.証明終了(40) (月刊マガジンコミックス)
C.M.B.森羅博物館の事件目録(18) (月刊マガジンコミックス)

Q.E.D.もついに40巻ですか――時間が経つのはなんとやら
C.M.B.も20巻は目前ということで今後ますますのご活躍を期待しておりますよ。


さて、あんまり多くを語る余裕はないのですが、

まずQ.E.D.
  • 書店の金庫から売上金が盗まれた。容疑者は四角関係の男女二組。  『四角関係』
  • 旅行企画会社が企画した無人島のミステリーツアー。三つの密室トリックを解明している間、実際に密室殺人が行われてしまう。  『密室 No.4』の二篇。


まず何が驚きって、『密室 No.4』が書き下ろしだってこと。もちろん初めての試み、且つ推理小説の諸々にインスパイアされたような舞台設定など、これまでよりミステリ度の高い作品になっています。
幾つか披露される密室のトリックの個々は目新しいと言わないまでも、それら先に提示されるトリックの差異がアリバイのための大きなトリックの一部になっているという。京極夏彦と綾辻行人を足して何かで割ったような風貌の推理小説家が出てくるので身構えておりましたが……。良くも悪くも金田一少年テイストといった感じ。まあ、水準点というところでしょうか。

問題は『四角関係』の方で、女子アナ志望⇒バイトのイケメン大学生⇒純情バイト女子大生⇒素朴な大学院生⇒女子アナ志望……、という風な堂々巡りの四角関係の男女を中心として描かれるわけですが、裏表紙には“ヒトの不思議を見る”なんて大仰に書いてあるもんだから、もしや『銀の瞳』(1巻所収)に似た趣向で、ひとの思いが事件を複雑化していくと同時に圧倒的なドラマツルギーが最後に現れる傑作だとばかし思っていたんですけど……。
んー、ちょっとこれは歴代ワーストにもランクインするほどの出来ではないですか。トリック云々というか、それ以前の問題で、ラストに犯人の吐露があるわけですがそこで語られるものから先を掘ってみせてこそ、ヒトの不思議が見出せようってものでしょう。無論、そんな感慨が昂ぶるのはこの犯人が仕掛けた“トリック”に騙されたようなものなんですがね。
素朴な大学院生が大学院生に見えないところとかもなんだかなーと思いましたよ。ただこの大学院生がカラオケボックスで見せるアレのシーンは、Q.E.D.の歴史に残る最もイタいシーンでしょう。



次、C.M.B.
  • 敵対していた組織の会長が殺され、香港の不動産王・周佳玲が疑われる。事件の鍵を握るのは、周家の双子だと思われるが――。  『龍鳳胎』
  • 新しい高校に転校した堺修二。転校初日、彼は自分の座席に奇妙な感覚をおぼえるとともに、クラスメートの田岸に目をつけられていることに気がつく。かつて自分の席に座っていた吹奏楽部の前部長が関係していると推測した彼は――。  『A列車で行こう』
  • 金持ち主婦が住宅街の真ん中で博物館を建て、自身のコレクションである硝子工芸品の展示会をすることになる。その下見に来た森羅たちだったが、お茶会の最中、金持ち主婦が最も大切にしていたティファニーのグラスが床に落ちて割れてしまった。金持ち主婦は、居合わせたコレクションライバルの僻みによるものだと疑い出して――。  『ガラスの博物館』の三篇。

この作者の中国ものには外れがないということで、『龍鳳胎』はもちろん傑作。中国の双子というと、ロケットマンの1エピソードを思い出したりするけど、不動産王の子息だけありこっちはどこか爛漫な感じ。
で、ああ、この兄妹が手を組んでやったんでしょう、と勘繰っていたら、なんと、兄の方が殺されてしまう。やったのは、どうやらボスを殺された敵組織の人間らしいのですが、ここから後篇へと続いていく筋運びには非常にワクワクさせてもらいました。
そしてまあ、敵組織の会長が言い残した「周家の双子」という謎の解答にゃ大いにズッコケましたが、中盤のあの衝撃が再びラストに至って息を吹き返し、且つ『龍鳳胎』というガジェットに結びつくという圧巻。
前作とも言うべき(登場キャラが若干カブってる)『張の幽霊(12巻所収)と併せて、おすすめです。

『A列車で行こう』は、おなじみ学園を舞台にした一篇ながら、意味深に語られるモノローグと馴染みでもないキャラクターの目線から転校初日の諸々が吶々と語られていく結構には、実に困惑。ヒントとも言うべきものもなかなか見当たらず、もしや心霊ものという裏技を持ち込んだかっ!と思いきや、まあ、これはですね、別な意味での反則でした!!
最後数ページは正直何がなんだか分からなくて、ぽかんとしてしまいましたよ。よくよく考えてみれば無理があるだろってか、そんなんでいいのかって激昂しちゃう寸前なんですけど、記憶喪失ものを描くパターンでここまでシンプル且つ大胆な手法、それも漫画で、ってところに感服いたしました。まあ、無理あるんですけど。特に三叉路のシーンではこの漫画はどこに行ってしまうんだろうと思いました。

最後の『ガラスの博物館』は、定番化しているC.M.B.の流れ(海外を舞台にした大作か大作まがいのもの⇒日常の謎・学園もの⇒骨董品など森羅の知識を生かした博物誌もの)を崩さず、今回はガラス工芸品が主役。見取り図があるのでてっきり凝ったトリックでも隠されているかと思ったのが、単なる……もう口に出すのも憚られる方法で時間差トリックを生み出したと明かされた日にゃぁ……うーん。


ということで、今回もC.M.B.がお気に入りですね。もちろん『龍鳳胎』と『A列車で行こう』。
特に後者みたいな、飛び道具を放ってくるからやめられませんよ!

あえて、繰り返しますけど、やっぱり『四角関係』は、ない!
あまりにあざとすぎるというか、そんな二元論で人間は語られるものではないっ!
犯人の表情には、そこからさらに奥深まったところにある感情があったはずっ!
それを描かずして、人間を語るなっ!

これだけは本当に許せませんね。久々に。

でも、それも楽しんだってことやんな。


次回はもう来年か。一年早いなー。あっチュー間に定年やで。定年ゴジラ。がおー。





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