1:夢の男
tanpen.jp/78/1.html
夢というのは不思議なもので、時間も場所も飛び越えてしまう時があります。果たしてそれは無意識による予知なのか、あるいは……とまあ、そんな話はどうでもよくて、それだけ神秘性があるものなので、パターンの変容が大事になってきます。
この作品に限っていえば、よくあるパターンですね。最後の女の台詞がひねりであるのかもしれませんが、未熟に感じます。異国という設定も漠然としていて、もう少し練り込むことが出来たんじゃないでしょうか。
話のネタはこのまんまでいいとしても、舞台を緻密にすることで読者を引き込ませ、より効果的にオチを効かせることが出来たかもしれません。練り込み不足ですね。
3:痛み
tanpen.jp/78/3.html
弟の腹痛の原因は……。ということで、う~ん、悪くはないと思います。語り手のキャラも立ってるし、歳の離れた弟たちに対する優しさという兄らしさ?も十分出ていて、そこら辺は良い。
オチもまあ、想定の範囲内ではありますが、きちんと冒頭で伏線も張られているので、問題はないし、何より痛みをキーワードに幼い弟と妹が徐々に成長していくんだなあという、兄の目線が何とも微笑ましい。
ですが。
面白くない。という訳でもない。ただ、いまいち印象が弱い。何かが足らないという訳でもない。これ以上付加するものは何もないと思う。
う~ん、好みの問題か。
あと、三点リーダは二つ続けて、……とするのが理想的。
4:どちらかはトム?
tanpen.jp/78/4.html
会話だけの小説は珍しくない。特にショートショートとなれば、すでに一種のスタイルとなっている。
で、そんな本作。
まあ、一読して、井上雅彦氏の『よけいなものが』を思い出したんですが、それともまた違った感じ。『よけいなものが』はいわゆるループ物なので。
本作は、自信はありませんが、どちらがトムだかあやふやになっているということでいいんかな。
トマールイ・ハジェリーという名前も意味深ですが、何か意味があるのか。“=トムあるいはジェリー”以外に。
僕の読解力じゃ無理だな。
雰囲気としてはアメリカンジョーク的で、回りくどい会話もそれっぽい。ただあんまり好きじゃない。コントみたいで。
もう少しオチが明確だったら楽しめたかも。本家のトムとジェリー好きだし(笑)
5:僕のやるべきこと
tanpen.jp/78/5.html
ほんわか系が続きますのん。
ん~、確かに色というのは不思議で、いわゆる知覚問題として語ることも、ただひとつの画として眺めるのもなかなか想像力を掻き立てるもの。
特に虹なんかは、さすがな自然のアート。つい出てると眺めてしまう。
本作の主人公もそんな風に自然の色を目撃して……ということなんでしょうが、自己完結しているだけなんですよね。冒頭の描写は感情移入を誘っているとは思えないし、つまる話、感情移入出来ないということは読者は語り手の一人芝居を見ているだけにしかならない訳です。
勝手に自分で悩んで、自分で気付いて、自分で立ち直る。理想的なプロセスかもしれませんが、それを物語として読んで読者が共感したり納得するにはかなりの筆力とアイディアが必要だと思うんですね。
むしろ、他者の力が介入した方が、そういうことってよくあるねと思える。これも悪くはないんですが、というか題材にしても書き方にしても嫌いではないんですが、サラッと読み終えて何も生まれない。かなりもったいない気がしました。
6:あるアパートの一室
tanpen.jp/78/6.html
キングの『キャリー』的なものということでいいんでしょうか。『キャリー』といわゆるお化け屋敷テーマを合わせるのはまあまあ面白いと思います。きっと前例はあるでしょうが。
ただ一つ気になったのは、ラスト。
“今では無人である。”で締められている。これ直前の文で考えると、アパート全体が無人ということですよね。ということは、隣の部屋に住む少女もいないということになる。だけどポルターガイストは続いている。ポルターガイストの原因が少女であることは言及されているので、間違いない。
ということは、少女が実は『キャリー』どころかただの幽霊だったようにも取れる。御祓いしてもダメだったんだから、それはそれで附に落ちない。ん~、深読みのし過ぎですかそうですか。
7:発掘の日
tanpen.jp/78/7.html
ラメゾンドはフランス語ですか?
教授たちの正体が何なのかが肝だとはすぐに予想できますが、ナマケモノというオチはなかなかですね。なんでナマケモノなのかは分かりませんが、インパクトはありました。
ところで、遺跡の描写にもう少し筆を割いていれば良かったですね。イメージするには不十分。モービルとかも。
このパターンは結局、途中までは定型なのだと思います。そのオチに何を持ってくるかでテーマを変容させることが出来る“現代の発掘”ネタは、ショートショートの例題のようなものでもあるのです。バリエーションも豊かでしょう。
半数近くの読者が、居住施設やモービルが何なのか予想がつくと思いますし、この作品の様態も想像がつくと思います。それを踏まえた上でのナマケモノですから、意外性もありますし、作者はただそのネタ一発だけではなく、働かざる人々の未来をとおし、働くということが文明や個の進化にとって何たるかを疑わせるよう描いています。
『夢の男』も一種の定型ですが、そちらがオチをも定型の中に入ってしまっていたのに対し、こちらはオチが定型の枠外にあるので、作品としてのオリジナリティーも出たのでしょう。
8:銀行強盗
tanpen.jp/78/8.html
確かに銀行強盗はリアルでありながら、非リアルだなあと。ところで、否リアルは非リアルでいいんでねえの。まあそこは気にしない者勝ちですね。
これもショートショートの良作でしょう。パターンとしては定型と呼ぶほどでもない普遍性ですので、それだけで評価出来ます。オチへの流れもそう来るかと。
個人的には冒頭の小説云々は理解し難いものでした。途中で妄言とか何とか言及されてますんで、まあ何も言うまい。ん~、それぐらいかな。
9:桜の坂道
tanpen.jp/78/9.html
舞い散れる⇒舞い散る
たりども⇒たりとも
涙をしながら⇒涙しながら
永遠欠けないの⇒永遠に欠けない
ほんやり⇒ぼんやり
口にしてなっかたのか⇒口にしてなかったのか
成れないのかもしれない⇒成らないのかもしれない?
一生を尽す・一瞬の気楽は、まあ誤用の範囲内ではない。
…は、……に統一するとして。
文頭に来た「は、マスを空けない。
酔っ払いながら書いたのですか。読み直すということをしないのですか。日本語デビューなのですか。
桜並木に重なる彼女の想い出……情緒的でいいと思います。
申し訳ないが、感想はそれだけである。
10:1番ショートコウタ背番号6
tanpen.jp/78/10.html
野球にはまったく興味が無い筆者は辛うじてショートというポジションは分かっても、体重の軽さも影響するのかどうかは分からない。きっと関係はないのだろうけど。
神様の問題に答えて……というのもよくある話だけれども、体重の変化はあまり聞かない不条理ネタだとは思う。
グラビティゴッドという名を持つ訳だから、重力あるいは引力を司っていることは分かる。
万有引力の法則は“物体の質量に比例し、相互間の距離の二乗に反比例する”というもの。1/6の月面でさえ跳ねる程度なのに、1/2の引力で天井に突っ込むことがあるのかどうか。地球上の重力加速度は9.8m/s2なので、半分になるということは一秒間に4.9m/s2の加速度となる。
ということは普通に考えてコウタくんのジャンプは4.9m/sを超える運動ということか。
スゴいな、コウタくん。ショートポジションどころの話じゃないぞ。
付け焼き刃の物理知識ではよく分からん。説明求む。
11:3分間
tanpen.jp/78/11.html
これはなかなかテーマも書き方もよろしいのではないでしょうか。
昔の感覚を取り戻すのは、ほんの些細なことがきっかけである。着メロという題材も今となれば至極身近なもので、なおかつ音楽という五感による想起も共感できる。
話の筋としては、着メロとはただのきっかけに過ぎず、主人公にとっては何でも良かったのだろう。何かきっかけになるものであれば。
もしそうじゃなくて、本当に着メロをとおして全てを思い出したのであれば、途端にテーマが薄っぺらく感じてしまう。
説明された背景だけではつまらない。千文字という短編なのだから余計に。読者の想像を掻き立てているのかいないのか判断が難しい書き方をしている。
あと、“今から帰る”電話をするぐらいなのだから夫婦間に何の問題もないのだろう。とするならば、単なる暇を持て余した有閑マダム染みた主婦の、惚気夜話に過ぎない……としても文章がカバーしているので良い。
12:コーヒーゼリーと都会の月
tanpen.jp/78/12.html
よいですねえ。
何よりコーヒーゼリーというガジェットがいい。都会的で作品に硬質な雰囲気をもたらしている。それが徐々にミルクと柔和していくのが、冒頭からの緊張感と同調していってる。
キャラ立ちはまあまあだけど、本当にこの男で大丈夫なのか彼女!!と心配にはなる。
コーヒーゼリー片手にプロポーズだぞ!!
ロマンチックや真面目さの欠片もない。男としてはけじめを持った方がいいのでなかろうか。
軟派ですなあ。実は下心があって、気持ちの白と黒の部分が混沌しながらひとまずプロポーズしてしまったのかもしれない。
なるほど、コーヒーゼリーに重ねているのか。
にしては、説明不足。
どっちにしろ、書き足りてない部分が見受けられる。もう一押し。
13:ウナギとカメ
tanpen.jp/78/13.html
こういう書き方の作品はあまり好きじゃない。なんというか無機質な感じがして。星新一氏の諸作品はアイディアとしては称讃するが物語としてはあまり好まない。ショートショートとしての魅力と物語の魅力は違う。それと同じ。
寓話テイストで、タイトルはウナギとカメ。大体予想はつく。書き方としてはウナギとカメに対する視点が散漫となっていた印象。
オチもそうだよな、そうなるよなというストライクゾーンだった。
何か、古本の『ショートショートの広場』とかを開けば載っていそうな、ベルエポックな作品。新しさがないというのが正直な感想。
ただ分かりやすくて、何よりリクガメのひたむきさが感じられて微笑ましい。カメはいい。イメージするだけで心が和む。自分はカメが好きなんだと気付かせてくれた。ありがとう。
14:アイヨリモ、コイナラバ
tanpen.jp/78/14.html
なるほど、鯉だったら良かったわけですな(笑)
アイディアはいい。
書き方も、終盤の流れでよく分からない箇所(一度逃げたのは過去なのか、冒頭よりも未来のことなのか、おそらく過去のことなのだろうけど、回想の切替がうまく行っていないように思える)が、まあ悪評すべきところではない。
伏線もきちっとしているから、フェアを意識しているのも感じられていい。
ただ、運が悪かったとしか申し上げることが出来ない。
伏線である“泥の……”というところでイメージが浮かんでしまった。艶やかな黒く細長い体が蠢くのを。
何故ならば、一つ前に『ウナギとカメ』という作品があり、脳内でウナギとドジョウのイメージが重なってしまっていたからだ。
だから肝心のオチはスルーしてしまった。
作品の順番が違ければ。
脳内イメージしなければ。
まあ、致し方ないことです。
以上、前半。
投票するなら『発掘の日』、『3分間』、『コーヒーゼリーと都会の月』か。
15:忘れるを知る
tanpen.jp/78/15.html
物語としてまとまっているし、文章も多少抽象的な部分が浮いているように感じるが、目立った粗はない。
ただ内容的にこれでいいのかと思う。
確かに自分も似たような経験を持ち、似たような結末を迎えつつある事例がある。
だとしても、これは忘れるというより無かったことにするという訳で、極論単なる“逃げ”でしかない。つまりこれは大人の対応とはいえないのではないか。
大人の対応とはなんぞやと問われれば、色々なものが浮かぶけれども、少なくとも本作の結末よりは望ましいものがあっただろう。
それは主人公たちの人生にとっても、本作の物語としての結末としても。
忘れるを知る、というのは大切なことだけれども、本作にとってはマイナスの効果にしか感じられない。
16:冬の思い出
tanpen.jp/78/16.html
一読後、正直何のこっちゃ分からんなと思った。まあ何度か読む度、徐々に話の中身が見えてきた訳ですが、それでもいまいち理解出来ない。
ん~、理解出来ないということは感想も書けないということで、二日間で一番読んだ回数が多くなったにも関わらず、いまいちピンと来ない。
舞台調の会話がそうさせるのか、歪んだ登場人物がそうさせるのか、学生同士の喧嘩にトラウマがあるからなのか……とりあえず、機械仕掛けの神的なオチだなということは分かる。たぶんそれも間違ってる。
ごめんなさい、分かりませんでした。
17:羽化と、その後
tanpen.jp/78/17.html
蝶と蛾は同じチョウ目で明確な区別はないという。いや、見た目も活動も全然違うと思うんですけど。
ということは、本作のように自分は蝶になると思ってるイモムシもいたりするんじゃないかと思ったりもする。
で結局は蛾に生まれた者は蛾として生きていくことになるんですね。で中には夕陽色でなくてコンビニの前の青い灯に引き寄せられてバチバチッとなって一生を終えるのもいるのだろう。寂しいな。
でも蛾に感情移入したところで、実物と出くわしたら殺虫剤を噴射して抹殺するに違いない。小説のマジックか。
ということでなんだかんだで結構面白かったと思います。
18:ニルヴァーナ
tanpen.jp/78/18.html
ニルヴァーナは解脱ではなくて涅槃でしょう。意味的に大差はないだろうからいいのかな。
まあ、文頭の配置がまちまちでちょっと苦手でしたが中身はなかなか面白い流れ。予定調和に皆がニルヴァーナに達していくであろうと思われるのだけれど、主人公の目的がいまいちよく分からない。
普及させるつもりなのか、液体はどうやって調達するのか、そこら辺の説明が欲しかった。
説明なんて、悟りの前には煩悩の何物でもないんだろうけど。
19:ダイエット
tanpen.jp/78/19.html
なんか、どっかで聞いたことある話だなあと。いや、まるっきり同じではないと思うけど、既視感というか『ウナギとカメ』と同じ感覚だけど、あっちがネタというかオチにそれを感じたのに対して、こっちは作品全体が何だか……。
せめてシャルロッテという名前だから、ホワイトデー繋がりでチョコレート的なオチだったら良かったんじゃないでしょうか。
少なくとも僕は二つ以上の意味で感嘆してたと思います。14日はホワイトデーだったんですね。今更ながら。
20:景色
tanpen.jp/78/20.html
文章はしっかりしてますし、まわりくどさがそれっぽい。それというのは芥川龍之介の『蜘蛛の糸』というか、いわゆる近代文学の薫りを指している訳ですが、まあ、土台がしっかりしていて背景というか文章のイメージが出ているので、小説としてちゃんと楽しめる。
でも主人公とその他の配置がよく分からないし、そもそも作中で実存するのが何なのかが不明確。
幻想小説として終わらせるには締まりが悪い作品なんですよ。テーマがそれほど分厚くないので、泡沫に帰してしまうと力が弱くなる。読後に引きずるような書き方をしているけど、主人公の背景が不明瞭なので雰囲気のみ。
まあ、総合的に言えば『桜の坂道』よりはレベルが高いぐらいかな。
21:ダークマター
tanpen.jp/78/21.html
短編の作品を読む時、作者の名前は気にせず読む。好きな作者がいるという段階でもないし、妙な固定観念を入れないように読む。100%見ないってことは出来ないけど、感想を書く時はまあ気にしない。前回の決勝3作の中では『フォークロア』が気に入っていて、本作を読んだ時、『フォークロア』の作者かなと思ったら案の定そうだった。
今回もまあまあ。ネタの着想が簡単で、奥深いものはないけど手軽に楽しめる。ショートショート系の作品は今回もちらほら見れるけど、どれも水準は高い。
ダークマターがないということは、ニュートリノもアキシオンもないんやね。ビッグバン理論もなくなるんや。
宇宙の謎にすがりつく人間のちっぽけさとか、色々考えた。でもダークマターは質量で仮定出来るし、科学者がそこで挫折したらあかんよなとは思う。結局、今の時代の科学は目に“見えない”ものばかりだろうから。
22:暗闇
tanpen.jp/78/22.html
寸断された木が互い違いに配置されたような作品。パズル的に楽しめればいいんだけど、どうも中心線が抜けているのかいないのか分からない。抜けているならいるで補完は読者に任せてくれればいいんだけど、どうもそうはさせてくれないらしい。
単語選出というか文脈は魅力的。
でも、語り手が何だか恐ろしい。地獄で贖罪をする訳でもなく、ただただ下界を眺めるだけ。虚無しかない。刑罰の名は希望と言っているけど、希望が見えてこない。子どもにその念が取り憑きそうで恐ろしい。
それと『景色』もそうなんだけど、タイトルセンスが良くない。いや凝ったタイトルをつければいいって訳じゃないけど、どちらも内容はしっかりしてるのにタイトルが薄っぺらい。
熟語をタイトルにするという手はいいが、この二作には合わない。
23:お母さん、僕は……
tanpen.jp/78/23.html
シンプルながら、光に包まれたPHANTASY。捻りも大事だけどそんな中でストレートなこういう作品があると、余計に響いてくる。
ただ全部ありがちというのもあれなので、タイトルはむしろ母親目線にするとか別角度にすればまた違っていたのではないか。
あと、最後の会話。
死んだということをわざわざ説明しなくていいと思う。読者には分かり切ったことだという訳ではないが、説明しないままの方が余韻も増す。
その分、序盤の日常を書き足してくれればすんなり入り込めたと思う。
24:天然
tanpen.jp/78/24.html
これはいい。
何がいいって、作者がきちんと何を書きたいのかはっきりしていて、読者にも親切。
これは僕たち全員に書けそうな物語だけど、なかなか書けない。アイディア云々というよりも書くことが怖い。
この主人公は僕たちだからだ。共感するとかしないじゃないじゃなくて、紛れもない僕たちの姿。普段は直視したくない、いや直視など出来ぬ姿なのだ。
こちらから感情移入するのでなくて、作品の方から迫って来る。
他の方々からも評判は悪くなさそうだし、たぶんこれが優勝だろう。
というのは言い過ぎかもしれない。
というのも、作者が言わんとしていることは僕が思っていることと違っている。
タイトルが物語っている。
なおかつ、妹との絡み。
ここが甘い。つまり、結局は主人公がそういう性格なんだ、というオチになってしまっている。
それにより、衝撃は薄らいでしまった。元から自意識過剰の奴なんでしょ、という読者が作品のメッセージを突き返す余裕が出来てしまう。
人は誰でもある瞬間――たとえば作品を一本書き上げた時――自意識過剰になるのだとそこさえ切り取ってくれれば良かった。
非常に惜しい。
それから蛇足だが、徹夜で書き上げたものには総じて良作がない。余裕を持って書き上げるように。
25:春はトンカツ
tanpen.jp/78/25.html
僕のショートショート観はおそらくマイノリティだと思う。僕が神と崇めている(笑)のは井上雅彦氏である。氏の掌編『レッドキングの復讐』にオマージュを捧げた『レッドキングの結婚』を、1000文字小説、短編の二つのサイトデビュー作としたのはそれが理由。どうでもいいが。
だからこそ、こういう作品が来られると困る。
話の筋は分かる。作品のどこに味があり、面白みがあるのかだって分かっている。
でも、好みではない。
好みで作品の良し悪しを決めるのはナンセンス。しかと承知している。
でも、素直に評価するとこの作品に丸はつけない。
独特な文体、独特な世界観は読み手を選ぶ。だが、一度ものにすれば宝だ。この作品の作者には貫いていって欲しい。
前回の『梅に猿』のようにその枠を超えたものでなければ評価は出来ない。
26:卵
tanpen.jp/78/26.html
これもまあ悪くはないんだけど、惹かれるものがないな。卵をメタファーに選んだのもうまいとは思えないし、そういう意味では『コーヒーゼリーと都会の月』に軍配が上がる。
オチはフィクションの限界を感じさせていいと思う。
どうせなら“下を見る”は“下を見た”にした方がいいんじゃないか。文体を意識しているのかしていないのか分からなくなる。
27:犬の木
tanpen.jp/78/27.html
異形コレクションの第11巻トロピカルに『夢を見た』というコミック作品があって、それに似てる。雰囲気が。
ただ旦那って呼び方とかバリエーションがなくて、話がこじんまりしてる。もう少し広げられたと思う。
…は二つ続ける。
!の後は一マス空ける。以上。
さて、拙作『ニューシネマパラダイム』について書けば、テーマはシネマ。
特にイメージソースはない。フィクションに対する新たなパラダイムシフトを、と思った次第である。
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