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 手のひらの海に、汐はまた満ちる。それまで待とう、死ぬのは。(皆川博子『ひき潮』より) ―――吉川楡井の狂おしき創作ブログ。

-週刊 楡井ズム-

   

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『輪廻天柱』

[解題]
1000文字を書き始めた頃、異形コレクションの各テーマに沿って書いていたわけだが、それに関わらず書いたもののリユース。ベースとなったものは言葉足らずが顕著だったが、加筆の際にだいぶ分かりやすくした。
BENNIE Kの『1001Nights』という曲が好きで好きでたまらなくてその作品世界が脳内に張り付いているから、それが元になっているのかもしれない。
もっとも、それを言うなれば千一夜物語そのものになってしまうのだけど。


 からりからりからからり……。
 東の、果ての、砂漠の、真ん中、天に屹立するその塔は、翠玉色の、出で立ちで、まるでそれは玉虫の、背を貼り付けた外壁と見た。
 塔に入るは二人の旅人。二つの階段を分かれて上る。天へと巻いた螺旋階段。昼も夜も区別なくして。
 赤と青の大理石。細かく、急勾配の歪んだ階を、二人はひたすら上っていく。からりからりからからり……。塔の何処かで風見鶏、風に吹かれて回ってる。ぐるりぐるりぐるぐるり……。
 二人の足取りの軌跡は砂を巻き上げて、塔の中で竜巻になる。
 中二階の踊り場で二人は初めて顔を合わせた。
「はじめまして」と彼はいう。
「出会えて嬉しい」と彼女はいう。
 握手と、頬でのキスを交わして、出会いを喜ぶ。
「貴方はどちらへ」と彼女はいう。
「頂上へ。この塔の」と彼はいう。
「奇遇ですね」また彼女がいう。
「まったくです」彼がいう。
 二人は別れて、再び上る。女は赤を、男は青の階段を選び、遥か頭上の吹き抜けの先、奇妙な数字と記号の描かれた、天井目指し上り行く。切り開かれた窓から見える世界の風景、白砂の中に翠の木々。青白い水晶の泉を足許に、一陣の風に枝垂れた葉を揺らめかし、それ以外は時間の止まった不毛の地。
 塔に響く、靴底と大理石のかちつく音。紛れて風見鶏、からりからりからからり……。何処かで生まれる竜巻と、砂に描くは螺旋の紋様。ゆっくり時間は廻り続け、雲を泳がせ、陽を遮る。翳った塔の内部に二人、別々の階で立ち止まる。まだまだ先は長い。塔の頭上の雲は晴れ、太陽がふたたび顔を出し、二人の足許を明るく照らす。
 やがて陽は傾いて、二人の前で階段は途切れる。二つの階が集い交わる場所。展望台から、果てのない、オアシスが点在する砂漠を眺めて、もう片方の姿がないことを互いに知る。
 寂しさが竜巻に乗せられ、風見鶏を緩やかに回すと、二人はそれぞれ階段を下り、再び、入口で顔を合わす。
「また会いましたね」と彼女はいう。
「お会いできて光栄です」と彼はいう。
 そして二人は二本の階段を其々選び、
「今度は頂上で」
「会えるといいですね」
 二人は竜巻に背中を押され、天に屹立する塔の、階段を駆け足で上っていく。今度こそ奇妙な螺旋の先、魔方陣の天井の下、方向示し廻り続ける風見鶏が、二人の姿を見つけるだろう。赤青どちらを選んでも、必ず塔の頂上で、めぐり会えると知っているから。
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