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 手のひらの海に、汐はまた満ちる。それまで待とう、死ぬのは。(皆川博子『ひき潮』より) ―――吉川楡井の狂おしき創作ブログ。

-週刊 楡井ズム-

   

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『魑魅朦朧』

[解題]
拙作の短篇『TAILLAMP TALES』で用いた手法を1000文字にも受け継ごうと思ったわけだが、以前に《千字一夜物語》シリーズの一篇『贋物と一角獣』という1000文字小説で使っていたので、それを極めた結果がこれ。 酩酊の表現を醸し出すには少し余白が足りなかった。これも詰め込み型。 辞書を引く癖がない人間には拷問のようだ。 なお、今敏作品『妄想代理人』の重要なファクターに影響を受けている。

そして、蛇足ではあるが、かねてから酩酊時に執筆をしたらどうなるかという実験をしてみたかった。その体現であることも添えておこう。

 さてもう一杯。飲んだら早々ずらかろう。一杯飲んだらあら不思議。日頃のやなこと仕事のやなこと何でもかんでも忘れに忘れて、浮き足気分で高飛びだ。金の切れ目が縁の切れ目と、識ある輩は言うけれど、識があっても才がない。知恵はあっても勇気がない。そんな輩は大人しくしみったれた世で野垂れ死ね。ちょいと、こんな時間だ。飛行機の、出発時刻に間に合わない。今から外でTaxi拾って、よその国へとひとっ飛び。だんな、銭はここに置いてくぜ。がらりと戸を開け暖簾を潜り、紅、橙、数多の暖色、渦巻く都会の夜景を流し見、役者気取りで悠々闊歩。かっぽかっぽ、お馬が通る。夜店の客引き、げろ吐く若造、そこのけそこのけおいらが通る。肩を叩かれ振り向きゃ無骨なおじんが二人睨みを効かせ、連行されそになる一大事。社長殺しに金銭泥棒、撲殺犯且つ金庫荒らしと並べ立てるはまた物騒な、思い当たりのない話。警官二人を振り切り駆け出す、混沌の町、摩天楼。自転車、灰皿、若人の群れ、Caba嬢、Hostes、billboard。雑音響く拱廊抜けて、一寸先は闇の路地裏、黒が黒でない黒猫蹴り上げ、蠢く御器齧り、溝鼠。人が踏み入る場所ではないとこ、漫ろも漫ろに密入国し、行き着いた先は吹き抜けの、都会の死角、行き止まり。追っ手の跫音迫りて覚悟を決めては汚れた壁に手をかけ、一心不乱に登れば視界はやがて朧気、霞みの衣。周囲を影が飛び回り、花畑に舞う蝶々の様にひらひらひらひら何処ぞのparade、瞼に母視る乳母車。ちゃりんちゃりんと耳驚かす、小銭の音色、母心。故郷に飾る錦は襤褸と成り果て、息子は此処まで育ち、母の俤、涙を絞る。何故に此世は斯くも偏り、地獄に堕とす酷なる獅子か。黒い鬣、血塗れた牙で、半身喰らうも余りの不味さに唾液を垂らし、尻尾を丸め、Neonの夜空に消えろ、黒猫。蝶が導く灯りの先に、橙に映える電波塔。絶景かなと嗜む心得、知らぬ俗世の者どもさざめく、集る虫けら押し競饅頭。Search-lightの直射を受ければ、蝶々は火に入る蟲と化し、灰燼に帰す灯蛾の名残をばら撒き花咲く姥桜、千夜一夜の宝籤。高笑いの谺は遠退き、背面全体走る痛みよ。宙に投げ出す己の手先は花弁どころか闇こそ掴めず、繻子押延べた様な下界はSmog覆う天窓と化し、壁から落ちた体勢のまま路地裏寝そべり飯事遊び。追っ手が照らす懐中電灯、Search-lightが噫眩し。

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