忍者ブログ

 手のひらの海に、汐はまた満ちる。それまで待とう、死ぬのは。(皆川博子『ひき潮』より) ―――吉川楡井の狂おしき創作ブログ。

-週刊 楡井ズム-

   

[PR]

×

[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。



【即興詩篇】更新

脳内世界地図ミクロ ―別冊 楡井ズム―
【即興詩篇】

『パピヨンの伝説Ⅰ ‐羽撃の姫君‐』を掲載。


短いシリーズものだす(予定)。


PR


<mixi更新情報>

コミュニティ 掌編小説集『千文字の王国』に6作投稿。

『聖母へ』 皓:奇想の章
『すごいものを書きよる』 皓:奇想の章
『バリア・オブ・ムーンライト』 蒼:空想の章
『ましまろ』 紅:猟奇の章
『夜想の水晶』 黒:怪奇の章
『紙魚を飼う』 翠:幻想の章


各種取り混ぜて。4ヶ月のブランクの成果、あるかなしか。


『聖母へ』について

『聖母へ』

 白砂がさらりさらりと天より落ちて、女は森の奥にひっそりと佇むちいさな教会でそれを眺める。
 樹々の陰、床板の溝、薔薇と天使の玻璃窓のそこかしこから、逞しい腕が伸びてくるのを女は知らない。腕がその胸許から赤子を奪おうとも救い出そうとも女にはそれが見えない。

 凍てるような朝が閉じ、茹だる午前の斜光が膝をつく女の頭に降り注いで、噎せかえるほどの熱気のなか、光の加減か額の垢か、女が常飲している錠剤の作用によるものなのか、あるいは、滅ぼせぬ罪の穢れか、沈黙をつづける女の額に浮かんだ雫は半ば濁っている。
 神は、検した。
 女の従前の人生と宿命と現在と、そして迎える運命の夜と。神らの意図などつゆも知らずに、腕の主らはあがいてもがき、小柄な女を取り囲む。
 皆が、考えた。
 女にこのものたちの在不在を報せるすべはいずこかと。ここに来た意味を、救済のことわりを悟らせる機会はいかがかと。
 女は教会を去り、病院へと戻った。処方薬が尽きたからだった。耳にこびりついている産声の真贋を彼女は聞き分けることができない。精神を患い、肉体を衰わせた彼女は帰巣に着くように森を出た。
 産後まもなく冷えた赤子は女の胸許を離れたのちに、太陽に灼かれて白砂の滝を泳いだ。

 皆の手は結んで交差しぶつかり合って、教会内の静寂を病めさせる聖歌をうたった。
 神と己の声、風琴伴奏、巡礼者の足音、魂をのせた飛虫のはばたき、皆には確かに聞こえた。女は教会の扉を抜けていく。
 皆は悲嘆し、くず折れた。天井を震わした慟哭にさえ女は振り返らなかった。
 しかし神は女に命を宿らせた。女が明るい森を歩き始めたとき、暗澹とした出口が覗けた。闇は熱を帯び、寄るとしつこいほどの暖色があふれだしてくるの だった。今にも転び出しそうなおぼつかぬ足取りながら、けれども力強く女は出口へと――さっき我が子を灼いた橙色の陽に果敢に挑んでいくように、外に開か れた入り口へと向かっていく。
 女は祈りを忘れたはずもなくその手は絶えず腹に添えられていたし、神の声は届いていたのである。何も存ぜぬのは皆の方だった。

 さて。
 産み落とされてから二十余年、葬儀からは寸暇もなく。来る者と去った者に勇気を与えたこの教会も、彼女に伴ううち通い慣れた。
 だからわたしは今日もここにこうして来て、白砂を眺めて思うのです。この祈りに貴女の祈りを返してたもう。

 太陽に灼かれてしまった、おかあさん。



さて、ついにこのときが来たのかと。というのも投票に影響がなくなったので。まあ、結果一票しか入ってないんですが。

この作品の背景にあるのはとても1000文字は語り尽くせない人生そのものであり、
いえ、その一部にしか過ぎないのですが、とてもじゃありませんが『聖母へ』を通してそれを察しろというのも野暮なもんです。

本作を書いたのは7月11日だったかと思います。

実家の玄関先に腰をかけて、暑苦しい澱んだ空気に喉をからしながら。

いったいこの時期に何があったのか。もう少し遡りましょう。




so_mania届いた。



so mania(初回生産限定盤)(DVD付)


スゴいね。
進化ってのはこういうことを云う。



うちのタマ知りませんが、備忘録として一応貼り付け。




昨日つぶやいたとおり、長年脳膜にこびりついて離れなかったあのシークエンスの正体が判明しましたので。


記憶ではもっと短く、
神社の境内のベンチのようなところに座る女性と猫一匹。
物語はなく、けたたましい蝉時雨のみ響いたる数分の話かと思っておりましたが、

実際のところはそんな不親切設計になってない模様。

境内のベンチだと思っていたのは縁側。
蝉時雨が印象的なのは同じながら、台詞はあるし、筋の通った物語も存在する。


埋もれた思い出を見つけた喜びはあれ、
とある一方では、おぼろげだったからこそ際立っていた記憶のなか、こうして正体を得ることで失われていくものもある。

観なければ、と後悔することは容易だが、
差し引いても釣りが残るほどの重みが、この物語にはある。
調べると巷の一部では有名な話なのだそうだ。


他人はさておき、私心にとっても
小学生の時分には畏怖でしかなかったこの物語から、何かが発していまが在ることは確かで、
これから先、何かが生じることもまた違いない……否、……

……生じさせなければならない。


創作とは、克服の手段でもあるのだ。



【即興詩篇】更新

脳内世界地図ミクロ ―別冊 楡井ズム―
【即興詩篇】

『滑車の満月』を掲載。



通常営業、通常営業でつ。




【即興詩篇】更新

脳内世界地図ミクロ ―別冊 楡井ズム―
【即興詩篇】

『テラ皇の極意』を掲載。


track:No.11



【即興詩篇】更新

脳内世界地図ミクロ ―別冊 楡井ズム―
【即興詩篇】

『炎喰い鳥の碑文』を掲載。


【即興詩篇】とR is for RHYME!のコラボ。
というか。前々からやろうかな……と思っていた、R is for RHYME!用のトラックに【即興詩篇】用の脳髄から取り出した閃きをかぶせたもの すなわち、
一見【即興詩篇】の手触りながら確りとR is for RHYME!として成立しているという【即興詩“特別”篇】。

なんやよく分からんが 無駄な努力、ご苦労

魔夢と網膜に映り込んだ 夏の情景 夏休みの宿題 妄執 その他諸々 をテーマとしたらこうなりました。てへ。



track:nine


H23.8.10現在

朝日文庫     20120907     六月の夜と昼のあわいに     恩田 陸/著
岩波文庫     20120914     日本近代短篇小説選 昭和篇 2     紅野敏郎/編 紅野謙介/編 千葉俊二/他編
学研M文庫     20120911     空海曼陀羅     夢枕 獏/編・著 松岡正剛/著 荒俣 宏/著
角川文庫     20120925     ミステリ・オールスターズ     本格ミステリ作家クラブ/編
角川文庫     20120925     赤い月、廃駅の上に     有栖川有栖/著
角川ホラー文庫     20120925     お初の繭     一路晃司/著
角川ホラー文庫     20120925     ルージュ・ノワール 赤い球体     倉阪鬼一郎/著
電撃文庫     20120910     バッカーノ!1935-A Deep Marble     成田良悟/著 エナミカツミ/画
河出文庫     20120903     フェッセンデンの宇宙     エドモンド・ハミルトン/著 中村 融/訳
河出文庫     20120903     知の考古学     ミシェル・フーコー/著 槙改康之/訳
講談社文庫     20120914     スラッシャー 廃園の殺人     三津田信三/著
講談社文庫     20120914     青銅の悲劇<瀕死の王> 上     笠井 潔/著
講談社文庫     20120914     青銅の悲劇<瀕死の王> 下     笠井 潔/著
講談社文庫     20120914     桜庭一樹選 スペシャル・ブレンド・ミステリー 謎007     日本推理作家協会/編 桜庭一樹/編
光文社文庫     20120912     少女たちの羅針盤     水生大海/著
祥伝社文庫     20120901     厭な小説<文庫版>     京極夏彦/著
新潮文庫     20120928     爛漫たる爛漫 クロニクル・アラウンド・ザ・クロック     津原泰水/著
ハヤカワ文庫SF     20120906     太陽の黄金の林檎〔新装版〕     レイ・ブラッドベリ/著 小笠原豊樹/訳
ハヤカワ文庫SF     20120906     瞬きよりも速く〔新装版〕     レイ・ブラッドベリ/著 伊藤典夫/他訳      
ハヤカワ文庫NV     20120906     ストレイン 2 暗黒のメルトダウン 上下     デル・トロ&ホーガン/著 嶋田洋一/訳
文春文庫     20120904     伏(ふせ) 贋作・里見八犬伝     桜庭一樹/著


H24.7.18現在

鬼談百景

小野 不由美

メディアファクトリー

税込価格:1680円

ISBN:978-4-8401-4651-7

発売日:2012.7.19

小説

恐怖の九十九話。著者が初めて手掛ける百物語怪談本!

残穢

小野 不由美

新潮社

税込価格:1680円

ISBN:978-4-10-397004-0

発売日:2012.7.19

小説

満を持して解き放つ、真夏の戦慄書き下ろし長編ホラー。

短篇五芒星

舞城 王太郎

講談社

税込価格:1050円

ISBN:978-4-06-217909-6

発売日:2012.7.14

小説

史上初!五篇全てが芥川賞候補!怒り、悲しみ、喜び、涙する舞城文学のすべて。


08/02  幻冬舎  幻冬舎文庫  小林賢太郎戯曲集 STUDY ALICE TEXT  小林賢太郎
08/03  文藝春秋  文春文庫  悪の教典(上)  貴志祐介  \730  
08/03  文藝春秋  文春文庫  悪の教典(下)  貴志祐介  \730  
08/10  講談社  講談社文庫  透明人間の納屋  島田荘司  \ 
08/上  河出書房新社  河出文庫  かめくん  北野勇作  \798 
08/23  早川書房  ハヤカワ文庫SF  シップ・ブレーカー  パオロ・バチガルピ  \1008
08/23  早川書房  ハヤカワ文庫JA  マルドゥック・ヴェロシティ(1)〔新装版〕  冲方丁  \756  
08/23  早川書房  ハヤカワ文庫JA  マルドゥック・ヴェロシティ(2)〔新装版〕  冲方丁  \756  
08/23  早川書房  ハヤカワ文庫JA  マルドゥック・ヴェロシティ(3)〔新装版〕  冲方丁  \756  
08/23  中央公論新社  中公文庫  武田泰淳 短編小説集(仮)  武田秦淳  \720
08/24  メディアファクトリー  MF文庫ダ・ヴィンチ  現代怪談実話傑作選  東雅夫  \620
08/25  角川書店発行/角川グループパブリッシング発売  角川文庫  BUNGO 文豪短編傑作選  芥川龍之介  \380 
08/25  角川書店発行/角川グループパブリッシング発売  ホラー文庫  夜波のまにまに  堀井拓馬  \620  
 

bk1とhontoが合体して、使いづらくなった……?

むーん


更新情報

25.5.5 新装開店大セール中

プロフィール

HN:r0bot21th
年齢:36
性別:男性
職業:虚無員



nirekunの最近観たビデオ

ブログ内検索

ポチッとな

【Gendama】楽しくお得にポイントが貯まる! 貯めたポイントは【現金やwebマネー】に交換できてお得♪ ▼登録は無料だから、まずは登録してみよう!▼ ↑↑ここから登録するだけで250ptが貯まる!!

カウンター

Copyright ©  -- -週刊 楡井ズム- --  All Rights Reserved
Design by CriCri / Photo by Geralt / powered by NINJA TOOLS / 忍者ブログ / [PR]