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 手のひらの海に、汐はまた満ちる。それまで待とう、死ぬのは。(皆川博子『ひき潮』より) ―――吉川楡井の狂おしき創作ブログ。

-週刊 楡井ズム-

   

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『都市伝説セピア』/朱川湊人


都市伝説セピア (文春文庫)

 人間界に紛れ込んだフクロウの化身に出会ったら、同じ鳴き真似を返さないといけない―“都市伝説”に憑かれた男の狂気を描いたオール讀物推理小説新人賞受 賞作「フクロウ男」をはじめ、親友を事故で失った少年が時間を巻き戻そうとする「昨日公園」など、人間の心の怖さ、哀しさを描いた著者のデビュー作。

〈誰そ彼〉とは〈誰そ我〉でもあるのではないか。憧憬―理想/模倣―相似の関係性を用いて、昼から夜へと身を没さずにはいられなかった人々にまつわる作品群を読み、その意を強くした。見世物小屋幻想/タイムリープ/都市伝説の怪人/死という芸術美/思い出の結晶……五篇に登場するすべての主人公が自分であると気付くより以前に、かつてあった時代と記憶と、今現在とを往き来する読者たる自分が取り残されてしまったような感覚。そこに存在しているのは黄昏のプリズムが生み出した亡霊なのだろう。生死に関わらずその漂泊は、さも純粋で目映い。  http://book.akahoshitakuya.com/b/4167712016




【収録作】
 『アイスマン』
 『昨日公園』
 『フクロウ男』
 『死者恋』
 『月の石』



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『パニックの手』/ジョナサン・キャロル

パニックの手 (創元推理文庫)
 黄昏の列車のなかで、ぼくは目を瞠るほど美しい親子と同席になった。妖艶で饒舌な母親と、うまく舌が回らず涙ぐむ娘。だが母親が急にぼくを誘惑しはじめ、 逃げようとしたとたん、「いか、か、か、かないで、お願い!」娘が腕にかじりついてきた…。物語に潜む“魔”が筆舌に尽くしがたい余韻を残す表題作をはじ め、世界幻想文学大賞受賞作「友の最良の人間」など全11編を収録。

 解釈の要らない短篇集である。解釈を施さなければ納得しがたい短篇集でもある。そんな板挟みのなかで僕らができることは素直に読んで根源的な驚きに身を震わすだけだ。ムダなセンテンスはどこにもなく、ムダだったのは自分の固定観念だったと気がつくまで。だって……神も地獄も実在することを/現代劇がメルヒェンを食い散らかす時代だってことを/嫌な思い出、会話や理想像が普通の代物だってことを/皮肉と赦しは別々に満ちていることを/人生がとびきり珠玉なものだってことを……教えてくれる。人生の秋、黄昏の刹那に何度も読み返したくなる。 http://book.akahoshitakuya.com/b/4488547095




【収録作】
 『フィドルヘッド氏』
 『おやおや町』
 『秋物コレクション』
 『友の最良の人間』
 『細部の悲しさ』
 『手を振る時を』
 『ジェーン・フォンダの部屋』
 『きみを四分の一過ぎて』
 『ぼくのズーンデル』
 『去ることを学んで』
 『パニックの手』









7月鑑賞メーター

暑いっすよね。こんなくそ暑い日に山にも海にも行かず、映画観てるとか、まじ勝ち組。






『スリーピング・ピル 幻想小品集』/嶽本野ばら

スリーピング・ピル 幻想小品集 (角川文庫)

 スリーピング・ピル。硬質な輝きを放つこの錠剤が、僕たちを恍惚へと誘うのです。その先にあるのは、いっときの完璧な闇か、それとも永遠の眠りか―。甘くてとろけそうなチョコレート、自らに課した痛みが、美への追求へ駆り立てるピアス…。だれかの愛だけではぐらぐらと不安定な、孤独で崇高な乙女の日常をささえる偏愛アイテムが、物語へと昇華する。単行本未収録の「Notsubo」をボーナストラックとして収録した完全版。


 立ち上る薫香は旧きよき怪奇小説のアトモスフィアか、イタイタしいほどケバケバしいアクセサリーが放つ魔のパフュームか……いずれにせよ乙女のカリスマとやらの手料理は噴出すほどには不味くない。表紙のイカサマエンジェルの方がよっぽどキワモノで、夢の女/狂科学者/鏡の魔/マゾヒズム/奇妙な商人/黒弥撤/大麻幻想/臭いの怪談……小品とはいえ怪奇幻想の真髄に舌づつみ。丸写しのような衒学趣味は油分糖分にたかる蠅の羽音のようだが、そこは暗黒横丁の銘菓スイーツ……ヘヴィロックなノイズに誘われ、酔眼朦朧からいざ贅沢なトリップへ! http://book.akahoshitakuya.com/b/404394375X



【収録作】
 『Sleeping Pill』
 『Somnolency』
 『Double Dare』
 『Pierce』
 『Pearl Parable』
 『Religion』
 『Chocolate Cantata』
 『Notsubo』









H25.8.9現在

岩波文庫 20130918 夢のなかの夢 タブッキ/作 和田忠彦/訳
岩波文庫 20130918 存在と時間 3 ハイデガー/著 熊野純彦/訳
角川文庫 20130925 グランド・ミステリー 奥泉 光/著
角川文庫 20130925 マリアビートル 伊坂幸太郎/著
角川文庫 20130925 三百年の●匣 芦辺 拓/著
河出文庫 20130904 自殺サークル 完全版 園 子温/著
河出文庫 20130904 異体字の世界 最新版 旧字・俗字・略字の漢字百科 小池和夫/著
講談社文庫 20130913 光待つ場所へ ●村深月/著
講談社文庫 20130913 竜が最後に帰る場所 恒川光太郎/著
講談社学術文庫 20130910 記号論 1 ウンベルト・エーコ/著 池上嘉彦/訳
祥伝社文庫 20130902 ダークゾーン 上 貴志祐介/著 発売前につき現在ご注文できません
祥伝社文庫 20130902 ダークゾーン 下 貴志祐介/著
祥伝社文庫 20130902 壱里島奇譚 梶尾真治/著
新潮文庫 20130928 ヒア・カムズ・ザ・サン 有川 浩/著
新潮文庫 20130928 素数の音楽 マーカス・デュ・ソートイ/著 冨永 星/訳
ちくま文庫 20130910 異形の白昼 恐怖小説集 筒井康隆/編
ちくま文庫 20130910 動物農場 ジョージ・オーウェル/著 開高 健/訳
ちくま文庫 20130910 日本幻想文学大全 1 幻妖の水脈 東 雅夫/編
ちくま文庫 20130910 異形の白昼 恐怖小説集 筒井康隆/編
ちくま学芸文庫 20130910 レオナルド・ダ・ヴィンチ論 ポール・ヴァレリー/著
ちくま学芸文庫 20130910 数学序説 吉田洋一/著 赤 攝也/著
ちくま学芸文庫 20130910 都市景観の20世紀 モダンとポストモダンのトータルウォッチング エドワード・レルフ/著 高野岳彦/訳 神谷浩夫/訳
創元推理文庫 20130928 人形遣いの影盗み 三木笙子/著
創元推理文庫 20130928 フランケンシュタイン家の亡霊 ケネス・オッペル/著 原田 勝/訳
ハヤカワ文庫SF 20130905 黒いカーニバル〔新装版〕 レイ・ブラッドベリ/著 伊藤典夫/訳
ハヤカワ文庫JA 20130905 開かせていただき光栄です DILATED TO MEET YOU 皆川博子/著
ハヤカワ文庫JA 20130920 ファンタジスタドール イヴ 野﨑まど/著
09/02 TOブックス TO文庫 記憶の食卓 牧野修 630
09/04 静山社 静山社文庫 吟遊詩人ビードルの物語 J.K.ローリング 672
09/05 宝島社 宝島社文庫 海鳥の眠るホテル 乾緑郎 680



鑑賞メーター備忘録

すっかりご無沙汰。なんだかんだと忙しかったので。読書感想と映画感想を交互にやって行きたい気持ちはあるんですが、根っからの飽き症がそれをよしとしないのです。







H25.7.1現在

岩波文庫 20130820 ランボオ詩集 中原中也/訳
岩波文庫 20130820 ユートピアだより ウィリアム・モリス/著 川端康雄/訳
岩波現代文庫 20130820 <子どもとファンタジー>コレクション 2 ファンタジーを読む 河合隼雄/著
角川文庫 20130824 みんなのうた 重松 清/著
角川文庫 20130824 人として軸がブレている 大槻ケンヂ/著
河出文庫 20130802 澁澤龍彦訳 暗黒怪奇短篇集 (仮) 澁澤龍彦/訳
講談社文庫 20130809 改訂完全版 占星術殺人事件 島田荘司/著
講談社文庫 20130809 新・垂里冴子のお見合いと推理 山口雅也/著
講談社文庫 20130809 虹果て村の秘密 有栖川有栖/著
講談社文庫 20130809 聖女の塔 篠田真由美/著
講談社文庫 20130809 藁にもすがる獣たち 曽根圭介/著
講談社文庫 20130809 新参者 東野圭吾/著
講談社文芸文庫 20130809 戦後詩 ユリシーズの不在 寺山修司/著
講談社学術文庫 20130808 川の文化 北見俊夫/著
講談社学術文庫 20130808 「ものづくり」の科学史 世界を変えた《標準革命》 橋本毅彦/著
光文社文庫 20130807 舞田ひとみ14歳、放課後ときどき探偵 歌野晶午/著
光文社文庫 20130807 群衆リドル Yの悲劇’93 古野まほろ/著
光文社古典新訳文庫 20130807 消しゴム ロブ・グリエ/著 中条省平/訳
新潮文庫 20130828 つぎはぎプラネット (仮) 星 新一/著
創元推理文庫 20130821 少年検閲官 北山猛邦/著
ハヤカワ文庫JA 20130809 日本SF短篇50 4 日本SF作家クラブ創立50周年記念アンソロジー 日本SF作家クラブ/編
ハヤカワ文庫JA 20130823 高天原探題 三島浩司/著
双葉文庫 20130808 爆発的 ――七つの箱の死 鳥飼否宇/著
文春文庫 20130806 ポーカー・レッスン ジェフリー・ディーヴァー/著 池田真紀子/訳
08/21 レディ・マドンナ 東京バンドワゴン 小路幸也 未定
08/21 なくしたものたちの国 角田光代 未定
08/21 原稿零枚日記 小川洋子 未定
08/21 鏡の偽少女 薄紅雪華紋様 朱川湊人 未定
08/21 おとぎのかけら 新釈西洋童話集 千早茜 未定



【即興詩篇】更新

脳内世界地図ミクロ ―別冊 楡井ズム―

【即興詩篇】

『反芻殺人』を掲載。


ときどき昔の恋を思い出す。来る明日のための鎮魂歌といったら聞こえはいいけど、実際はとある短篇小説のための試験なのだ。
つまりは、恋愛とは何かってことの参考なのだ。それ以上の意味はないよ。きっと。




『カンパネルラ』/長野まゆみ


カンパネルラ (河出文庫)



〈「兄さん、あの署名、……あれはどう云う意味。自分の名前を記せばいゝのに。」〉緑に深く埋もれた祖父の家で、ひとり療養する兄の夏織。気怠い夏の空気の中、弟の柊一は夏織の秘密の“隠れ処”を見つけ出そうと川を遡っていった……。


 誰がこの作品を透徹な水のよう、と比喩できようか。確かにその水質は清らかで、水面は目を瞠るほど透いているのかもしれない。しかし生い茂った草葉のせいで、陰った水面はさながら“黒冷水”。顔を浸してみれば、すべては覗けぬ沈鬱さが底を埋め尽くしているのだ。それでも冷ややかさが心地よく揚々と涼んでいれば、少年の手が引きずり込んでいく。過ぎ去る時の憂いとまばゆいばかりの自然の耀き、思春期の畏れが共生する一篇。……思い返せばその昔、自分もこんなひと夏を体験した。いまも忘れられない『銀河鉄道の夜』をはじめて読んだ黄昏時に。http://book.akahoshitakuya.com/b/4309403956





【即興詩篇】更新

脳内世界地図ミクロ ―別冊 楡井ズム―

【即興詩篇】

『百合(リリー)、墓標、翡翠(ハルシオン)』
『紫電拡張のマーメイド』を掲載。


前者は、前々からやりたいと思っていた【即興詩篇】と【メェヘン語大辞典】の接近遭遇。成功しているとは言いがたい。いちばんやりやすいところを攻めたんだけれど。
後者は忘れ物を取りに戻った的な。要は以前から着想があったけど、手をつけていなかったところってこと。
ちなみに今回はどちらも、短篇小説で応用しようと思っている時系に関するある挑戦をしております。これについては失敗したと思っています。あぁ、筆神サマ降りてこんか。






更新情報

25.5.5 新装開店大セール中

プロフィール

HN:r0bot21th
年齢:36
性別:男性
職業:虚無員



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