おじさん、おじさん、そこで何してるの。
おじさん……刑事さん?
なんだ、新聞記者さんか。ううん、また何かヒカルくんのことを聞きに来たのかと思って。そうだよ、先週なんか毎日聞きに来てたんだ。ヒカルくんと仲は良かった? ヒカルくんてどんな子だった? いつもどこで遊んでた? ってもう僕たちも飽き飽きしてたんだ。仲は良かったけど、年中一緒にいる訳じゃないから。
おじさんも聞きに来たんでしょ、ヒカルくんのこと。いいよ、僕が知ってることなら教えてあげる。
ヒカルくんはね、そうだな、嘘吐きだった。うん、僕昔絵本で読んだことがあるんだ。狼少年の話。ヒカルくんは狼少年だった。遊ぶと言ったら? そうだな、色んなとこに行くよ。公園も川も、お化け沼って分かる? 油田のそば? ああ、あそこは油田って言うんだね。うん、そこ。後はね、学校の裏山に行ったり、山の中にね、お化け屋敷があるんだ、廃墟っていうのかな。友達の従兄弟のお兄ちゃんが教えてくれたの。
それからね……ヒカルくんがいなくなった日? 分からないよ。何処で何してたかなんて。僕は塾だったからね。オーロラ? ヒカルくんがそんなことを言ってたの? オーロラを見に行くって? ふ~ん、じゃあおじさんはオーロラ探してるんだ。くくく、僕? 知ってるよ。でも教えてあげない。嫌だよ。
元はと言えばね、ヒカルくんが悪いんだよ。夏にオーロラが見えるなんて嘘吐くから。
何処で見れるかは教えられないよ。教えたら僕もヒカルくんみたいになっちゃうもん。でもね、これだけは教えてあげる。カラフルで光の加減で歪んで見える、ヒカルくんがオーロラって言ったのはあながち嘘じゃないかもしれない。あ、皆が来た。
ねえ、おじさん。
ヒカルくんを探してるんでしょ? 皆で案内したげるよ。誰にも言わないって約束したらね。おじさんは特別だよ。ほら、こっち。ここだよ。
綺麗でしょ。これがオーロラ。ただの油なんだけどさ。ヒカルくんに教えてもらった。時々、遊びに来るんだ。だよね、皆。くくく。ヒカルくんもね、今頃オーロラを見てるんだよ。何処でって……くくく、おじさんも気が付いてるくせに。
どうしたの、怖いの? お兄ちゃんの友達が言ってたよ。お化け沼は底なしだって。一度落ちたら沈んでくだけ。あんまり下がると落ちちゃうよ、おじさん……くくく。
じゃあね、おじさん。僕らだって怖いんだ。……バレるのがね。
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