『Dの呼応』 ☆☆★★★
今年もbk1に投稿するのかなアンデッドさん。さてDでカセットテープと言ったら、沙藤一樹『D-ブリッジテープ』を想起させる。良くも悪くも定石どおり。この場合、ラストの順番違うでしょう。「後日改めて…、…と言ってました」の二文が最後に来るのが望ましい。
『あの娘のシューズ』 ☆☆★★
「ありがと」の後に「今日も……暑いな」なんて切り返せるのだからシューズの力を借りずして、幾らでも仲良く出来るだろ委員長。てか今の小学校は教室に冷房がついているのか? とりあえず貶す事も出来ないが褒める部分も見受けられない。絵本で読みたい。
『天井裏の散歩者』
拙作じゃばかやろう。芦辺拓氏の短編に『屋根裏の乱歩者』というものがあるが、小2の時に僕も同じタイトルを考えている。まあ、自作に使うことはないだろうがね。蟷螂は女性性の象徴。少年が大人の女性の世界を見て失禁するだけの話。雰囲気を楽しむが勝ち。
ちなみに『屋根裏の乱歩者』は、ちくま文庫『乱歩の幻影』および有楽出版社『探偵と怪人のいるホテル』に所収。前者は乱歩リスペクトのアンソロジー。後者は異形コレクション初出のシリーズを中心にまとめた短篇集。
『貧と富の心の狭間で…』 ☆☆☆★★★
タイトルのつけ方に難あり。しかし中身はいい。文章表現に拙さが見えるものの、とても簡潔に的確に意味を伝えることが出来ている。惜しむらくはオチ。語り手の状況は直接的に表現していいと思う。瓦礫の下にいるのが自分なのか女性なのか。台詞も微妙。
『言い訳』 ☆☆★★★
時間ものに特別な愛情を注ぐ僕なので、色々と言いたいことはあるのだけど強くは言わない。まず推敲すること。それからオチは僕も第77期の作品で全く同じ手法を使っている(厳密的には違う)ぐらいありきたりなこと。アイディアも微妙。説得力に欠ける。
『明日はそんなに晴れじゃなかった』 ☆☆★★
“ふぁごふ”。冒頭からしてシュール。超現実感。しかし携帯電話等それっぽいものが出ておきながら明瞭に現代ぽさが出ているわけではない。つまりシュールだけどリアルじゃない。“自己死人像の原始想念”……と見ると本日最も白けてしまう。
『まだ逢えないあなたへ』 ☆☆☆★★
これはホラーですか? いやこういうファンレターが来たら今世紀最大のナルシスト・俺!もさすがに引くなあと。つまりは『千年女優』的な突き抜けた自己愛を描いているのだと勝手に納得。“まだ逢えない”の“まだ”の理由が明かされないことの恐怖。
『夏』 ☆☆★★★
浮遊と飛行の違い。濁流は名詞であって動詞ではない。単体のものそのものが暗転するとは? “しかし信じられようか、……”。おかしい。何かがおかしい。暑さで文体をもおかしくさせるという手際は評価できる。ただシャーペンはシャープペンにしてもらいたかった。
『傷の話』 ☆☆☆☆★★★
巧い。文章も過不足なくて的確。“来た”の“た”が抜けているが。老人とのやり取りがあからさま過ぎるのを除けば、文句ない。ただいかんせん設定がとっつきにくい。顔に傷をもつ者たちと女。女の存在が幻だろうと霊的存在であろうと、怪奇と現実のバランスが悪い。
『いらっしゃいませ』 ☆☆☆★★★
手放しで褒められるようなものではないけど、いいと思う。ジェントル・ゴーストストーリーは基本的に好みじゃないが、霊園内のコンビニというのが新しい。どうせだったら谷ノ内霊園なんぞと改名せずに、谷中霊園のまんまでも良かったのではないか。
『カンナの日記』 ☆
最近見ないね。忙しいのかしら。他に語ることは何も無い。
『虚言癖』 ☆★★
まあ、分かる……言いたいことは。ただ小説ならば違う手法でテーマを表現してほしいと思う。それかむしろ詩的にまとめてしまった方が収まりもいいというのに。人は嘘をつかなきゃ生きられないんですよ人間諸君。にしても肝心要の最後の一文が非常に読みづらい。
『前がみの人』 ☆☆☆★★★★
いい。何せ前髪なんぞ切ってしまえばよかろうがな、と思っていたら、あんなロマンチックに落とし込まれてしまうんだもの。透明人間よりかは筒井康隆『母子像』を思い出して、楽しく読めた。“着ている服……”、都合のよさがさらりと出ているのもまたオツなもの。
『星果録『真愛』の項』 ☆☆☆★★★★★
自分はこの作品の面白さの十分の一も理解していないかもしれないが、面白いと率直に思う。投票するなら迷わずこれ。SF的な設定の表し方が非常に好ましかった。オチは微妙だがテーマと直結しているので良い。『ヒト』という呼び方には工夫がほしかった。
『衝撃! 南光坊天海の恐るべき陰謀!!』 ☆☆☆★★
流石に書き慣れている風で安心して読める。噂の「ななななんだってー!!」も話の内と外で重要なところが考えられている。にしては陰謀にインパクトがないことと、個人的に歴史物が好きではないことから、一概に良作と言いきれずパス。
『水底の世界』 ☆☆☆★★★
ダムに沈む町という設定は実はかなり好き。自作短編にも取り入れている。それだけでも評価をあげたくなる。時事ネタにしては遅まきながらではあるけども。水準以下ではないにしろ、表現がありきたりなのが物足りないところ。“還って”、“かえる”の違いは何か。
『みえないナイフ』 ☆☆☆★★
みそっかすのサゲはうまいなあ。会話すらまともにしていないのに“実際に会話すると……”という矛盾はさておき、“僕”が彼女が出来た途端“俺”になるところとかは、男子感情をよく表している。というか今時人見知りなだけではいじめられないと思うな。
『月留学』 ☆☆☆★★★
流れるような⇒流暢な。文章表現・用法は覚えれば何とかなるのであえて厳しく言わない。オチは月である意味がないけどまあまあ無難。悪くない。まとまってはいる。一番気になるのは直人の彼女がどうするか(笑)ちなみに僕はこれを読んで来期の作品を決めました。
『気になるなぁ』 ☆★★★
冒頭からてにをはが……。“?”を連ねて書くところがメール世代だなとも思う。“一億円ん”の“円”の読みは“え”だけになるのか、新しいなそれ。タツヤのキャラも酒の力を借りる必要はない。爽快な飛行機雲のような無重力の陶酔感? ……気になるなぁ。
『時空蕎麦』 ☆☆★★★
タイトルがいい。冒頭と“私”の登場は要らんでしょう。三人称多元描写と一人称がごった煮状態。“私”=神? だとしたらオチがな。一徹して変現に極めれば良かった。硬質な文体にも綻びが散見される。一杯のかけそばパロディが放擲されてしまったのが残念。
『精神の統一』 ☆☆☆★★★
タイトルを『精神の統一』としながら実は紛うことなき精神の離別を描いているようで憎い。存在と精神の定義を描くと、どちらかに偏ってしまう。心做しか、だけ浮いているように見える。追い抜くのが女の人というだけあって、男性性の愚かさも見て取れる。
『そらみみ』 ☆☆★★
誓いを立てた「いつの日か」に説明がほしい。啓示とは何に対していっているのか。よく分からなかったな。てっきり『こ』『ろ』『せ』のことかと思ったけど、再読したら辻褄が合わなくなった。繋がっているようで繋がっていない。そこが良いのかもしれんが。
『スーパードライ』 ☆☆☆★★★
ドライに徹している。改行がめんどくさいが、ドライな文章はテーマともはまっていて、いつもの作者というより、一個の作品として文体が完成している。説明も的確で無駄が無い。残念なのは持ち味が薄まってるところか。ビールが飲みたくなりました。
『できるだけ素っ気なく、でも優しさを忘れずに』 ☆☆★★
少しシュールになりすぎかなあ。台詞も余計な切り出しが多いと思う。特に女子高生とかの反応はいらないんじゃないか。作者お得意の詩的な部分を、意識して批評しているようにも思えるけど、ギャグにしては笑えない。
『気になること』 ☆☆★★★
ネネちゃんのママを思い出した。継続が目的となる行為に対し、短期的な満足で物足りる猫の好奇心との対比。その興味はとどのつまり嫉妬に違いないのだけれど、ぼんやりしてる。サンドバッグの描写が余分か。印象が薄まってしまった。残念ながら。
『スプロール』 ☆☆☆★★
姉が三人居たら一人は実務用、一人は観賞用、一人は相姦用と決まっている。姉の身体も弟の精神も三つにばらけたような。ロシアの将校、ロシアの将軍。まさ に大量生産品の個別の洋服の縫製の違い程度な表現ということで気に留めるほどのこっちゃない。少し散漫している印象。それも悪い意味で。
『十字路』 ☆☆☆★
ロックは十字路の悪魔が齎したのだと云う。これが俗にいうラブアンドピースとやらか。違うな。だよねえ。狙いすぎててよく分からん。1000文字小説の悪いところの露見。
『動く物を食べる』 ☆☆★★
ロボットに顔をつけてはならぬと同じ理屈か。口蹄疫の牛を屠殺しその場で食せばいいだけ。動く菓子を開発できるのか日本は。語り手にも時代背景にもリアリティは皆無。昔って何ぞとの説得力が必要か。何せ浦島太郎は「ひどい時代」だと言葉にしない。
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