手のひらの海に、汐はまた満ちる。それまで待とう、死ぬのは。(皆川博子『ひき潮』より) ―――吉川楡井の狂おしき創作ブログ。

-週刊 楡井ズム-

   

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《短編》第105期感想

http://tanpen.jp/105/all.html
☆=なんとなく完成度
★=好み

1:『折れた傘』 ☆☆☆★★  (☆3×1.5)+★2=6.5
2:『境界散歩録』  ☆☆☆★★★★ (☆3×1.5)+★4=8.5
3:『あまりの違いにぎゃーてー、ぎゃーてー、俺、驚愕』 ☆☆☆☆★★★★ (☆4×1.5)+★4=10
4:『後ろに』 ☆☆★★★★ (☆2×1.5)+★4=7
5:『ひとりになるまで』 ☆☆☆★★★ (☆3×1.5)+★3=7.5
6:『多彩青事』 ☆☆☆★★★ (☆3×1.5)+★3=7.5
7:『傘』 ☆☆☆★★ (☆3×1.5)+★2=6.5
8:『天下泰平』 ☆☆☆★★ (☆3×1.5)+★2=6.5
9:『海賊』 ☆☆★★★ (☆2×1.5)+★3=6
10:『風の惑星【改】』 ☆☆☆★★★★  (☆3×1.5)+★4=8.5
11:『五日間の記録』  ☆☆☆★★★ (☆3×1.5)+★3=7.5
12:『どんふぁん』 ☆☆☆★★★ (☆3×1.5)+★3=7.5
13:『一枚の絵』 ☆☆☆★★★★ (☆3×1.5)+★4=8.5
14:『カレーの王子様』 ☆☆☆☆★★★★ (☆4×1.5)+★4=10
15:『莢を燃やす』 ☆☆☆★★ (☆3×1.5)+★2=6.5
16:『corkskrew』 ☆☆☆☆★★★ (☆4×1.5)+★3=9
17:『悪魔の裁判』 ☆☆☆★★★ (☆3×1.5)+★3=7.5
18:『役』 ☆☆☆☆★★★★★ (☆4×1.5)+★5=11



1:『折れた傘』 ☆☆☆★★
http://tanpen.jp/105/1.html
本作が好きじゃないのは、物語が始まる前から結論が出ているからだ。
役目も意味もあることを語り部は認識し、再確認するために800文字弱を費やしているだけだ。
ただそのためだけに、傘や見知らぬ彼は利用されてるに過ぎない。主張が強い。好きじゃない。


2:『境界散歩録』 ☆☆☆★★★★
ねぎま、ヨーヨー・マ、ヨーヨー・マ!?
もうこの時点で勝ち。夏の気まぐれが生んだ飲んだくれの妖精の、厭らしい笑顔が見える。(イメージ)
異界と境界の使い方が都合いいように思える。高層ビルの隙間にある境界というのがちょっとパンチ不足。でも、涎は出た。相変わらずの"未来"≠"味蕾"についにやける。


3:『あまりの違いにぎゃーてー、ぎゃーてー、俺、驚愕』 ☆☆☆☆★★★★
http://tanpen.jp/105/3.html
こういう書き方の他にもあるけど、これは読みやすい。
海苔が糊になっちゃうところとか天ぷラヴソングとか興ざめだけど、最後まで読んで、もういいよ!許す!って思った。
ただ俺あんまり弁当屋の弁当好きじゃないんだ。コンビニで済ませる方。だから弁当屋の香りを想起して胸焼けがした。ネタの相性ってあるからね。


4:『後ろに』 ☆☆★★★★
http://tanpen.jp/105/4.html
こういうの嫌いじゃないんだ。別にアリだと思うし、おほうって嬉しくなったんだけど、発表する場所が違うと思う。別な場所で出逢いたかったね。


5:『ひとりになるまで』 ☆☆☆★★★
http://tanpen.jp/105/5.html
なんで顔だけ、顏(旧字体)なのか。
んー 物語と人物の距離感はいいと思うんだ。けれど、読者との距離感がこれで正しいのかどうか。 大事なものはひとつだけ落下しているに留めるべきでしょう。零れ落ちているものが多くて、きっと孤独でさえこの場所にはない気がする。あるのは寂しげな雰囲気ばかり。ピーマンの寂しげな雰囲気詰めだ。
俺は偏食が過ぎるので、ピーマンの肉詰めもチーズも好きじゃない。でも着エロは好き。着エロが何かよく分からないけど、エロがつくものとは相性がいいはず。


6:『多彩青事』 ☆☆☆★★★
http://tanpen.jp/105/6.html
どうしろと。
パンチラインがない。ほくろって気持ち悪い。なんか、実際見るのも好きじゃない。なんでだろう。字面にしても気持ち悪い。ほくろ、って。ほくろ。
詩ならともかく歌詞っていう、歌う前提で考えているのがなんともはや。まあ倦怠感は出ていたよ。


7:『傘』 ☆☆☆★★
http://tanpen.jp/105/7.html
あれまた傘かと思ったら、梅雨時だからか。
というかね、視点人物ぐらい整理しましょうよ。僕がそこにいるなら、彼って誰だよってことになってくる。そもそも彼っていう風に視点を切り離す意味もないと思うけど。差すとか刺すとか、適当すぎるし。
なんか出来事と思考がミスマッチ。思考していることが普通にめんどくさいアレなんだよね。お前単に風邪引いて学校休む口実作りてえだけじゃねえのかってどつきたくなる。気をつけて帰りなよ。雨の日に考え事しながら歩いてちゃ危ないよ、という優しさ。


8:『天下泰平』 ☆☆☆★★
http://tanpen.jp/105/8.html
よみづれぇ。!を半角にしたらアレが崩壊しちまうよ。
俺はこういう作品の、面白み方、が分からないんだ。物語としての面白みを放棄してるでしょ。
面白みってのはfunnyじゃなくて、interestingですよ。
"語るしす"とかの使い方も中途半端だし、楽しいのはご自分だけじゃないですか、ヘイヘイ。


9:『海賊』 ☆☆★★★
http://tanpen.jp/105/9.html
ラストまで読んで、なんでじゃっと思った。なんか、普通。 普通だし、普通だったら普通すぎて避けるようなところ。
作品の大半が少年が海賊と触れ合うことで成長していく過程を描いているんだけど、いちばん大事な部分がちょん切られて、なおかつ何も成長していないことを知らされる。 そんな物語、誰が喜ぶのよ。
ところで、ONE PIECE好きっていうのが何か最近恥ずかしくてね。何だろみんなが言ってることと同じことは言いたくないみたいな。厨ニ病かな。


10:『風の惑星【改】』 ☆☆☆★★★★
http://tanpen.jp/105/10.html
ちょっと説明過多な気もするけど、好きっちゃ好き。テーマもちゃんとしているし、ちゃんと考えている。さすがにパワードスーツはつまらないと思ったけど。
にしても、最後の一行がなんか、笑っていいんだかくそ真面目なんだか分からなくて、どうしよう。 "おとなしく控えめな"とか、1000文字に出てくる人間て自虐的か自意識過剰かどっちかしかいないのか。だからちょっとこれも手放しでは褒められないんだよな。


11:『五日間の記録』 ☆☆☆★★★
http://tanpen.jp/105/11.html
といった感じである、じゃねえよコノっ。なんで『傘』といい、近頃の学生風情は理論武装したがるのか。
これ、僕が教師だったらよかったんじゃないか。なんとなく。 "ニタッと笑いながら"とかもさ、なんかこう鏡とかに映った自分の顔が笑っていたとかっていう描写ならともかく、ただ僕は笑いましたよっていう説明だし。記録するならもっと克明に記しましょう。


12:『どんふぁん』 ☆☆☆★★★
http://tanpen.jp/105/12.html
生まれはフクシマ、ヒプホプ育ちの俺なんですが。いま世間で話題のフクシマにはですね、なんと、ドンキホーテないんですよ。うん、だから馴染みがない。あ、でも近所にトライアルはあるよ。24時間スーパーみたいなやつ。
いい男だね。うん、よかった。おつりで215円ってことは、幾ら払ったのか。そういうところが気になる俺もいい男。


13:『一枚の絵』 ☆☆☆★★★★
http://tanpen.jp/105/13.html
なにこの文の並び。縦に読むと何か。それともこれがいわゆる一枚の絵になるとか。
ヒロアキって名前で呼んでさ、そいつは別荘持ってるって、なんだそのセレブぶりは。お前、ハイパーメディアクリエイターですか。
正直、絵の描写はワクワクしました。絵の枠の、それこそ境界を越えた感じとかもいいねえ、でオチもまあいいでしょうね。このアーティスティックなホモ臭。好きです。いやホモじゃないけど。


14:『カレーの王子様』 ☆☆☆☆★★★★
http://tanpen.jp/105/14.html
怖いですねぇ。厭ですねぇ。 眠け眼ってなんだ。寝惚け眼じゃないのか。 それはそれとして、ちょいと流れがぶつ切りで余計に胸糞悪いんですけど、カレーっていう庶民的なテイストが功を奏しているのか、灰汁が強くない。 でもカレーってのが何か稚いというか、もっと別な何かがあった気もしないでもない。 でもいいですよ。最後の"怖かった。"で冷めてしまいましたけどね。


15:『莢を燃やす』 ☆☆☆★★
http://tanpen.jp/105/15.html
情報量が多い。それも要らぬ情報だから余計に厭になる。月次勇吾って名前すら厭になるからね。 ほんとに些細なきっかけで針が僅かに横に振れればすごい面白いと感じられるはずなんだ。だから作者が面白いと思ってこれを書いた気持ちも分かる。とはいえ、それイコール俺が楽しめるかどうかは別の話。


16:『corkskrew』 ☆☆☆☆★★★
http://tanpen.jp/105/16.html
対ストーカーの姿勢が、そのまま人生の引き金になるのかどうか知らんけど、これはとてもよいのじゃないか。 このタフな感じはハリウッド的、かどうか知らんけど、普段は思いつかないタイプ、それでいて日常の枠からはみ出さないと来たもんだ。 ただしタイトルで損をしている気がする。


17:『悪魔の裁判』 ☆☆☆★★★
http://tanpen.jp/105/17.html
せめて体裁だけでも取り繕うなら、「」で括られた例の文を最後の一行にするとか卒なくしてほしかった。
んで、俺がよく言うのは、リアクションって大事だよねえってこと。本作も投げっぱなしじゃないですか。だったら最初から視点人物なんて取り入れなきゃいい。読者へのアプローチ一本ってならね。
でも"この言葉に魅了され、酔いしれるが如く、テレビに齧りついている自分がいた。自分の記憶に、少しばかり思い当たる節があった。そうだ、知ってる、これ。"なんて書かれた日にゃ、人物と読者の立ち位置が乖離してしまって前述のアプローチの効果も薄まってしまうんじゃないか。
じゃあ、なんで視点人物が必要だったかっていうと、その人物が一連の出来事と対峙して、リアクションをする。それを踏まえた上で読者は共感するというプロセスになるはず。なのに、そういう作業もされてないから尻切れとんぼですよ。
で、あとこれどうして米国の裁判にしたのかね。世界まる見え的なアレですか。このご時世に。悪魔の裁判てのも鳴り物入りが過ぎるんじゃ。


18:『役』 ☆☆☆☆★★★★★
http://tanpen.jp/105/18.html
いやもうこれはね、最高ですよ。まさに柔らかい暴力、というより半ば溶けかけた暴力だ。旱の下のバニラアイスだ。彼女は何を守ったつもりだったのか。分からない。分からない役なんだ、この小品に対する読者は。
でもこれを読んで悦んでいる俺はもしかしたらマゾっ子なのかもしれない。
語られるものに語りを奪われていく不思議。このうねりのなかでの息苦しさが心地いい、というマゾ気質。挫折したわけでもないのに、変態野郎になってしまった俺はどこに救いを求めればいいのか。開き直りか。
イェスッ! 俺もセックスしたか(ry
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