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 手のひらの海に、汐はまた満ちる。それまで待とう、死ぬのは。(皆川博子『ひき潮』より) ―――吉川楡井の狂おしき創作ブログ。

-週刊 楡井ズム-

   

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《短編》第100期 投票作品 選考座談会

《短編》第100期記念 ではない。
1-9  http://r0bot21th.edoblog.net/Entry/72/
10-18 http://r0bot21th.edoblog.net/Entry/73/
19-27 http://r0bot21th.edoblog.net/Entry/74/

10:『うたかた』 ☆☆☆☆★★★★  (☆4×1.5)+★4=10
15:『みさき』 ☆☆☆☆★★★★ (☆4×1.5)+★4=10
21:『恋の魔法』 ☆☆☆☆★★★★★ (☆4×1.5)+★5=11
23:『カベさんの事』 ☆☆☆☆☆★★★ (☆5×1.5)+★3=10.5
26:『撮影旅行』 ☆☆☆☆☆★★★★ (☆5×1.5)+★4=11.5
27:『クレーンの夏』 ☆☆☆☆★★★★★ (☆4×1.5)+★5=11

順当に行けば、11ポイント以上獲得した3作品に投票すればいいんですがね。

今日は選考委員の3人格にお越しいただいているので、対象作品6作品をもういちど見つめなおして、投票作品を選考して参りたいと思います。

選考委員:
小説の縛りに厳しい/美文マニア 檀鬼ロック氏 (以下「」)
茶々いれ担当/エログロ好き  赤頭巾氏 (以下「」) 
好みの激しい/荒唐無稽以外お断り 滝太吉氏 (以下「」)

司会:楡

でわでわー



楡「まず、『うたかた』10ポイント。僕は不親切な書き出しだなあと思ったのですが」
「間延びしてる。"冬の朝のように張り詰めた暗黒に、それだけ生白い幼い両腕が伸びていて、影でしかないわたしはその子を胸に抱き上げた"。飲み込みづらい。餅の感触に似ているが」
楡「そう。惹きこまれない。ハードルが高くて」
「"そしてひどく傷ついた気がして、わたしは怒って帰ってしまった。"単体ならまだよい。その後も、"どんなに望んでも叶わなかった。夫が死に、わたしもいよいよというその時、彼がいなくて、わたしは寂しくて堪らなかった。"と続くから、感情的すぎて、微塵も泡沫の影響を受けていないのが分かる。もっと引いて書かなければなるまいに」
「俺は好きだーーー。あぶくみたいな子ども、好きっ。消える瞬間見たいなー」
「玄関から出て行ったではないか」
「なんでしゅわしゅわってなんねえのかな」
楡「下品だってことです」
「上品さが鼻につくんだよなあ。もっと生々しいほうがいい。泡の感覚。泡沫」
「確かに、あぶくというより霞のようだ」
楡「1000文字ではよさが伝わらない典型かもしれませんね」
「お、大人になった、うたかたと デキチャエバ よかったのに。ソープ、プレイ」


一同、妄想中。


「『みさき』は小生好みだ。よく練られている」
楡「枠としては夢オチですが、一個の枠じゃないんですよね」
「魔法、が効果的だ。"そんなやり方では、魔法はかからないというのに。"で、はて?と読者に感じさせつつ、最後の一言がとても効いている」
「プリーストの『魔法』ってことか」
「違う」
楡「アイドルとか、芸能界なんていう横軸の差異と、夢とか現実感の縦軸の差異が見事に嵌っています」
「じゃあ『パーフェクト・ブルー』だ」
楡「違います」
「美文アンテナに反応したのは、"朝焼けなのか夕暮れなのかいぶかしみつつ空を見上げ、家に帰れば先ほどまで一緒にいたタレントがテレビの中だ"。しかし、こういっちゃなんだが、件の魚に喩える部分は評価しないな、小生は」
楡「分かりやすくて、いいと思いましたが。舞台にも合っていますし」
「荒波を越えるという発想は海上のものだ。海中の魚は激流に飲まれながらも自由に泳いでいる。劇中のアイドルたちはそれとは相反するものだと思うのだ」
楡「むしろ、船の方が近いと。語り手は難破船みたいなもので……」
「せっかく魚になるなら泳ぐ描写ほしかったな。人魚の後を追っかけて追いつけない稚魚」
「既存のイメージにすがるのはつまらない」
楡「まあ、そのイメージあってのものですからね。それを巧くまとめたってところにこの作品の意義があるんじゃないですか」
「もちろん評価はする」
「ミナガワヒロコの 『蝶』 、アイドル 放尿シーン あるから、好き。この作品、ない、つまらない」
「だからやっぱり『パーフェクトブルー』には勝てないんだって」


一同、今敏に合掌。TAICHI MASTER『あ・い・ど・る feat.RYOJI&宇多丸』を合唱。


楡「次、『恋の魔法』。これ滝くんが好きな分野ですね」
「いいじゃない。先鋭ですよ。"赤の担任"って引っかかりの後で、"赤"って語り手、二人の担任を浮上させるところのインパクトは大。何がなんなのかわかんないけど、意味は分かるってのが面白い」
楡「まあ、それだけって気もしますけど」
「いきなり始まっていきなり終わるっていう疾走感がいい。恋って瞬時に燃え上がってあっという間に鎮火するでしょ。そういうことだよー。分かれよー」
楡「少なくともfunnyとinterestingの両方を兼ね備えている稀有な作品ですね」
「恋というものを皮肉るのは簡単だが、ここまで痛切に、痛烈に、批判する姿勢は気に入った。滝くんのいうとおり、切ないのでなく、刹那いという」
楡「見た目はガジェットの工夫でありながら、見かけ以上に中身は暴走しているってとこはどうでしょう」
「ちょっと足りない気もするけどね。できるならこの世界ごと滅ぼしてほしかった。恋が地球を滅ぼす……これぞ恋の魔法。でも、恋なんてのは個人的なものだから末路が相手の死のみでオールOKなんだよ」
楡「本当に逆回転してほしかったですよね」
「小生は、"うづくまっていた"の誤字以外、ノーコメントだな」
「……のーこ、めんと」
楡「あれ、珍しいですね。好物だと思ったのに……。ん? その頭巾。潤ってる……血……。それ、ナイフ……まさか!?」


地球、逆回転。一分、リバース。


楡「『恋の魔法』は置いといて、次、『カベさんの事』」
「これ、てっきり塗り壁の話かと思ったら違うんだね。ふーん」
楡「妖怪の類ではないんじゃないですか。妖怪っぽい、だけであって」
「怪談のパターンとしてあるからな。こういう文体」
楡「とても巧いと思うんですけど、"もしかして、会社に住んでるんじゃ?"でどんな感情になればいいのか分からないんですよね。おかしみを感じればいいのか、ある種の怖気を立たせてもいいのか」
「笑い話でいいのだろう」
「"住んでたりして。きゃはは、ウケるー"みたいな?」
「そこまで莫迦にはしていない」
楡「本当にいそうだから面白いし、気味が悪い」
「そこに尽きるな。語り手の話を聞いていた聞き手(読者)の感情が、語り手のそれと、最後の最後で重ねあう趣向。巧いと思う」
楡「滝くんは」
「文句はないよ。リアリティとそうでない部分のバランスもよくて。俺みたいなのも楽しめる。それってすごいことだよね」
「小生も文句はない。こういう形式の作品としては無駄がない」
ただ……」
楡「どうしました?」
「普通だよね」
「安定を取るか、刺激を取るかに迷ったとき、どっちに転ぶかが問題だ。小生は安定を取りたいが、6作品ともある程度の安定性は保っているから、そのなかではどうしても埋もれてしまうのではないかという懸念はある。かつ、柔和な文体はあまりピンとこない」
楡「光るものがないってことですね」
「エログロの、よちよち、余地、ない。再会」


一同、一服。


「廃墟、写真撮影、むはむはー。雪山、私をスキーにつれてって、夜、ゲレンデが溶けるほど舐め回すからさあ、アンデスの凄惨な聖餐、うらやましすな、むはー。彼氏? キテルよ 一緒に。スキーバッグ? カメラバッグあけたら、血みどろの……コマギレ、赤と白のコントラストだぉ、愛してる。年上キラー、年上殺し、、、、まじで? そっちも?」
楡「そういう話ではないでしょう、『撮影旅行』」
「でも炭鉱跡の廃墟で写真撮影ときたら、もう怪奇の世界だよね。最後の雪山への反響だって、絶対ボーカル以外の声混ざってるって」
楡「"心地よく"って書いてますよ」
「だからもう彼岸に来ちゃってるのさ」
「"二人乗りのリフトがほとんど空のまま山頂へと向かっている。それでもゲレンデには最新の曲が流れていた。"だけで、舞台の説明をしているのがいい。へたくそだと人の影を描いてしまうからな」
楡「僕が冬の季節感を強く感じたのは、その寒々しさのせいでしょうか」
「目を覚ましたまえ。主人公が引きこもりがちなだけだろう」
楡「色んな読み方ができるってことですね。余白がある」
「終盤、説明風なのも情報を断絶して、余白を生かす工夫なのではないか」
「殺人、バレるの、怖い、どうしよ」
「恋人がいないのでどぎまぎしているだけだろう」
楡「逆に気を使ってってことも考えられます」
「じつはふたりは、蜜月、だった、肌のぬくもり ストーブ、ペチカ、電気毛布の夢みるか」
「まあ、ファインダー越しの人間模様ってことでねえの。実際のところは分からないっていう」
楡「なんか評価に自信なくなってきたなあ」


一同、記念撮影。


楡「さて、最後。『クレーンの夏』。これは、どうでしょう」
「営みは描けている。文章に気を遣い過ぎてる気配もあるが」
楡「"クレーンの夏"が、村人にどんな感情を抱かせるかっていう複雑な部分がよかったと思います」
「SFとファンタジーの言葉づかいだね。長野まゆみみたいな硬質さには欠けるからさ。ブラッドベリほど懐も深くないし。だったら童話的に開き直ってもよかったのにね」
楡「この微妙な按配が、特色だとも思いますけど」
「物語性としても、描き方も充分評価できる。言葉遣いは許容の範囲内だろう」
「まあまあそのとおりでございますね。時期的なものもあるし。好みとしてはストライクだから」
「じつはふたりは、蜜月、だった 肌のぬくもり ストーブ、ペチカ、電気毛布」
楡「じゃあ、『クレーンの夏』についてはこれぐらいで。では、3人格の選んだ3作品と、僕の選んだ3作品のなかで重複したものから投票作品にするということでよろしいですね。一旦、CM」





CM[番外編]
「『フリーパス』の言い訳は?」
楡「え、いや、あの、その……」
「あれで評価されると思ったのか」
楡「ううんと……」
「オリジナリティの欠如、物語の無解決、余白のあざとさ、尻つぼみ、お前が他の作品で気にする部分大体当てはまっているじゃないかよ」
「二期優勝したからって調子に乗っただろう」
「なぜ、エログロ、のせなかった……? ばかなの? おくびょうもの」
楡「いやー、色々考えたんですよ。ほんとに、ぎりぎりまで。作品投稿したの、いつだと思います? 締め切りの三秒前ですよ。どんだけ悩んだことか」
「で、身内の推薦もあって、これを」
「のろけめー」
「浮気ばれてしまえ」
楡「してないっ」
「まあ、ある意味で吉川楡井としての再スタートには合っているんじゃないか。『フリーパス』は石川楡井時代の作品だし、それを吉川として出すというのは過去の清算だからな」
「凄惨な聖餐 のほうが、貴方にはお似合い、なのに」
楡「そんな重大な意味はなくて、単に加筆しようにも加筆する余地がないと感じた稀有な作品だったので、思い入れが……」
「お蔵入りにしろよ」
「食われてしまえ」
楡「誰に、どこを? ……もう、発表に行きます」





楡「では改めて、僕としては『恋の魔法』、『撮影旅行』、『クレーンの夏』となりますが、皆さんは?」
「『みさき』、『カベさんの事』、『クレーンの夏』。やはり文章、構成の安定、気遣い、人の描き方を優先した」
「俺は『うたかた』、『恋の魔法』、『クレーンの夏』、ファンタジックな素材と刺激のある使い方大好きだから」
「私は……アアア、『SAKURA』、『水妖』、『死せる美術のためのサクリファイス』……エロ、グロ、万歳…」
楡「最後のはアウトでしょ、色んな意味で。6作品のなかではなにかないんですか」
「アア、アンデス聖餐、むごたらしポルノグラフィ、ファインダ覗かないと、アアア、覗く行為、出歯亀……頭」
楡「『撮影旅行』ということですか?」
「こっちゃあ来ぉい、こっちゃあ来ぉい  ボーカルの声、木霊、パシャリ、心霊写真の出来上がり」
楡「明らかに作者の意図無視してますが」
「感想ってそういうものじゃん」
楡「ということで、選ばれたのは三票獲得『クレーンの夏』、二票獲得した『恋の魔法』、『撮影旅行』に決まりました。結局、僕の採点上位の作品になってしまったということは、最早この座談会も必要なかった……」
「至極当然だろう。貴君は小生たちの最大公約数なのだから」
楡「まあ……。てなわけで、これから投票に行って参ります。ここまでお付き合いいただきありがとうございました。
それから、《短編》100期ほんとうにおめでとうございます。小説を書くのに疲れて路頭を彷徨っていた僕を、再び小説の世界に引きずり込んでくれたのは《短編》でした。これからも、がんばろう、自分。
では、また中の人が暇なときにお会いしましょう ( ̄∀ ̄*)ノシ」


「これにて、半年振り、の感想、書きは 無味乾燥に無事完走。ぺけポン」 


http://tanpen.jp/vote/date.html


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