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 手のひらの海に、汐はまた満ちる。それまで待とう、死ぬのは。(皆川博子『ひき潮』より) ―――吉川楡井の狂おしき創作ブログ。

-週刊 楡井ズム-

   

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『嫁が入院しやがりまして』

[解題]




丈夫な体だけが取り柄だったんですが、暑苦しさに気圧され窓全開で扇風機にあたって寝たら、すぐに喉がやられました。熱も四十度なんてざらで、医者に見せたら急性の扁桃炎ということで即日入院の運びとなったわけです。
 六畳の四隅にベッドが置かれた相部屋に入って、氷枕に点滴と、もう何がなんだか分からないまま横になっていたら、隣のベッドから声をかけられたんです。こちらのカーテンは開けてありましたが、隣は端まで締め切っていて、先客がいると踏んでいたんですが、いざ声をかけられると、正直めんどくさいなあ、と。ちょっと快復してからにして欲しいなあ、と。
 痛い喉を労わりつつ一応返事はしました。で声色から察するにご老人らしいんですが、やれ嫁が入院しやがって見舞いに行かなきゃなんね、とか、夕飯の支度どうすりゃいいんだ、とか、自分が入院してんじゃねえのかよと突っ込みたくなるような愚痴ばっかりで、二言三言ぐらい聞いてすぐ嫌気が差しました。ただ聴いているうちになんだかんだ言って奥さんのこと愛してるんだなあと微笑ましく感じる部分もありました。
 あんな狭苦しい部屋に入って気が滅入るだろう、とか、早く退院してくれやしないか、とか、まあ後者は自分が困るからでしょうが、終いには嗚咽を漏らし始めて、弱ったなあなどと思いつつ相手をしていたんです。薄目を開けてちらりとカーテンを見ると、隙間からご老人の左眼が物欲しそうにこちらを覗いてたりするんですね。もうなんなんだと、そんな目で見るなよと。
 で、何とか熱も下がって起き上がれるようになったら、看護士が、魘されてましたねと言うんです。ずっとうんうん言ってましたよって。隣のカーテンを開けてもらうと、そこには誰もいなかったりして、今では高熱のせいで幻を見たり聞いたりしていたのかなと思うんですが、おまけに自分の風邪がうつったのか、嫁もあっさり入院しやがりまして、もうなんなんだよ、と。

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