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 手のひらの海に、汐はまた満ちる。それまで待とう、死ぬのは。(皆川博子『ひき潮』より) ―――吉川楡井の狂おしき創作ブログ。

-週刊 楡井ズム-

   

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『フリーパス』

[解題]
1000文字小説の以前、超短編として書いていたときの名残。特筆すべきは、当時から一文字たりとも加筆していない点にある。理由は、加筆する必要がないと判断したからだ。こんなことは珍しい。
テーマは遊園地。施設としてみるのではなく、メタ的な視点で見る以外方法がなかったのだけれど、ある意味で誰も書かないであろうチープさもまた、俺特有の外連味、なのか。



 手まねく男はにやけた顔で、入場券の束を握りながら、門の脇に立っていた。ぼくが近付こうとすると、女の子が腕を取って制止した。
「ダフ屋だってことぐらい、知ってるよ。でもチケットがないと入れないんだろ。放してくれないか」
 女の子はさびしげな目をしながら数歩だけ離れた。
「やあ。どうだい、君も一枚。この遊園地は一人でも楽しめる。君はまだ少年だ。無料であげよう」
 男が、入場券を渡してくる。
 その背後に、巨大な観覧車。ぴかぴかと光っている。ゴンドラの環を横切るように、コースターがレールを滑る。門の向こうではパレードの行列が波打っていた。七色の風船が宙に浮き、七色の花火が打ち上がる。オバケヤシキから悲鳴が上がり、メリーゴーランドから歓声が聞こえる。
「このチケットでいつまでいれるの?」
「それはフリーパス。いつまでも。気がすむまで」
 男は答える。
「気がすんでも……出られない?」
 ぼくは笑った。男も笑った。ぼくは振り返り女の子を見る。
「ごめんね。ぼくは行くよ。楽しい世界に」
 涙を流す女の子を振り切り、ぼくはフリーパスを出して、入場するのです。彼女はぼくの分まで生きてくれるでしょう。
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