－週刊 楡井ズム－

［解題］
人形怪談、ロボットSFなんとでも呼ぼうと思えば呼べるのだが、俺にだって羞恥心はある。この【千文字の饗宴】紅の章は、エログロがテーマである。
たとえばアダルトヴィデオがそれぞれカテゴリーで腑分けされるように、そこから各要素を取り出して、世に溢れるエログロの真部分集合（笑）を綴じ込めたいというのが本音。決してマンコと言いたくて書いているわけではない。どうしても気に障るなら「ウルトラマンの子ども」に差し替えたっていいぐらいだ。だがここまで直接的な物事を描いておきながら、誰もが胸のうちでは知り尽くしているだろう単語を……なんてのは野暮がすぎるか。ごめんなさい。

　どんな不細工な女にもマンコはある。ないとすればセフレのジェニファーぐらい。
　セフレなのにマンコがない、なんて言い方をすると本末転倒も甚だしいけど、実は前提が抜けている。ジェニファーは手タレをしていた、というか手タレをするために生まれてきたグルテンドロイド。グルテンドロイドについての説明は端折るけど、二世代前の機種だから、今はもう製造中止になっているから中々珍しい。当時特殊な職業向けのドロイド開発がブームで、その流れを汲んで人知れずぽんと出てきたのが彼女だというわけ。
　とはいえ今じゃあ手タレに留まらず、全身が各モデルアプローチに秀でた複合型が出てきて、彼女も職をなくしてしまって、そのまま融解場送りにするのもなんだから、という形で我が家に迎え入れることになった。まったく人間てのは身勝手なもんでね、手タレ向けなわけだからそもそも手首より先だけにすればいいものを、端麗な肩より上の部分までつけたもんだから、ご主人様は観賞程度にと思っていたみたいだけど、生活しているうちに情が移っちゃってさ。
　確かに最初は悩んでたみたい。だって何の役にも立たないんだもの。私もなんでこんなものずっと置いとくんだろうって思ってた。でも私、あのすらぁっとした指を見てると、やっぱり日本の技術最高って思えてきて、それで、試しにちょっとそのしなやかな指でね、まあそう、慰めてみたら、いやいやこれはってことですっかりセフレ。え？　そんなのセフレなんて呼ばない？
　何言ってんのさ。彼女はまぎれもなくフレンドの一人だし、することはセクシャルなことなんだから、セフレと呼んだって構いやしないでしょ。
　グルテンドロイドができたおかげでフレンドも少なくなっちゃってね。私も彼女と同じ境遇なわけ。そりゃあ彼女の肌も人体に限りなく近い材質だし、ゴム製の私からしてみればジェラシーも起きるけど、でも優越感もないことはない。だって私の顔はご主人様を興奮させる……のかどうかは分からないけど、まあ一応、本物の女性だと思わせるって意味でついてるわけでしょ。意味なくついてる彼女とは違う、確かに彼女は私と違ってとても綺麗だけど……ご主人様はもう性行為用グルテンドロイドに夢中になって、昔は不細工だ不細工だって罵ってもくれたのに、すっかり放置プレイ続行中。
　けれど今のドロイド、アミもすぐに捨てられるわ。貴女みたいにね。うふ、人間なんてそんなものよ。