手のひらの海に、汐はまた満ちる。それまで待とう、死ぬのは。(皆川博子『ひき潮』より) ―――吉川楡井の狂おしき創作ブログ。

-週刊 楡井ズム-

   

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『巨人のレイプ』

[解題]
家人に読ませたら、すぐに「元カノの部屋でしょ」と指摘された。おかしな話だ。独り暮らしをしたこともない作者だ、アパートの知識はそういうところから得ず、どこから得るというのだ。おかしな話だ。おかしな……。
さておき、今回投じる【千文字の饗宴】第2章の100篇は巨人や小人が2回ずつ出てくる。巨人の最たるイメージはJ.G.バラード「溺れた巨人」なのだが(決して『進撃の○○』の影響下にはない)、本作の場合は津原泰水「カルキノス」にあるのだと思う。意識したわけではないのだが。
ノドのあたりに水晶球を入れたらというくだりは、以前にも何かで使った気がする。まったくどういう性癖なんだろうとつくづく。もっとも球は首の代わりだ。青春時代、そんなような作品ばかり読んで過ごしたのだから無理もない。過去の自分が悪い。
落ちはいかにもだが、あまりにも痛々しい中盤までとのバランスを考えれば、ちょうどいい。



 1Kの部屋でも意外と広いなと思った。アパートの部屋には今まで入ったこともなかったから、変なイメージが想像上のアパートの一室をより窮屈にさせていたのだ。ましてや彼女の家にはロフトがついていた。のぼってみると僕の部屋ほどはある。天井は低いし明かりも届かないけど生活すらできそうだ。どこにでも売ってそうな合板を組み合わせた本棚が隅っこに置いてあって、見覚えのない卒業アルバムが立てかけてあった。彼女には内緒で開いてみる。何組だったかもわからないけど数ページ開いてすぐに見つけた。あは、やっぱ普通だ。この頃から彼女は可愛くもないし、ひどくブスでもなかった。
 急に静かになった僕を察して、彼女がロフトに上がってきた。小学生みたいにあぐらをかいた僕を押し倒してアルバムをひったくると本棚に戻す。反射的行動だ。彼女の見られたくないものを見た優越感もあったに違いない。起き上がりこぼしのように僕はつんのめって、膝をついた彼女を押し倒す。発育途中の中学生でももっと膨らんでいるだろう小さな胸に顔を埋めて、ジーンズのなかに手を入れる。下着のフリルに指を取られそうになって時間がかかった。さっき食べたカボチャのスープの臭いがした。
 アパートというのはどの部屋もこうなのだろうか。もし忍びこむことができたら僕はどんな女性だって襲うことができるかもしれない。特に片付けが苦手な女性だったら、ロフトもごみごみしているだろう。隠れるには十分だ。そして何か薬でも使って睡らせていたぶる。気づかれたらやっぱり殺そう。手足首を後ろで縛り、包丁で喉を突き刺して、腹にかけて切り開く。するとどうだ。ノドの辺りに水晶球でも放り込めば、女体がすっかり女性器に早変わりだ。腹部に中出ししておけば、彼女の屍体を見た人々は巨人の仕業だと思うんじゃないかな。巨人のアソコは並の人間には大きすぎる。人は人、巨人は巨人を相手にすればいいとも思うけど、そんなことで事件が解決するわけもない。
 念願だったキッチンでの挿入に移りつつ、流し台の果物ナイフが目に入った。いま店長の彼女が死んだら秋物フェアを控えてる僕らの店が回らなくなるから何もしなかったけど、よくよく考えてみれば、僕がもし小人にそんなレイプの仕度をされたとしたらものすごくありがた迷惑な話だし、何よりさっきから、あのちっぽけな天窓に見えている巨人の眼。
 あれは彼女でなく、僕に熱視線を送っている。
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