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 手のひらの海に、汐はまた満ちる。それまで待とう、死ぬのは。(皆川博子『ひき潮』より) ―――吉川楡井の狂おしき創作ブログ。

-週刊 楡井ズム-

   

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『しろすけ』

[解題]
夏休みといえば『となりのトトロ』か『火垂るの墓』。『火垂るの墓』テーマはもう『供物連鎖』とかで書いている。ならば、『トトロ』……そんな風にして着想に及んだわけではない。
イメージソースは『地獄先生ぬ~べ~』のケセランパサラン登場の回。
最後の「おしまい。」をどういう風に取るかでこの作品の意義も変わってくるし、存在にも関わってくるだろう。宿題に追われる小学生の頃に戻って考えれば、少しは真の姿を捉えられるかもしれないが、実は作者である自分も分からないww


 8月8にち
 ぼくはさいしょ、雪がふったのだと思いました。でも、おかしいなと思いました。夏に雪がふるなんておかしいのです。おかあさんはきみがわるいわと言ってました。おとうさんは雪じゃないよとおしえてくれました。おねえさんはかわいいじゃないとよろこんでました。
 おとうさんが言うには、雪はけせらんぱさらんというようせいらしいのです。まっ白いわたの固まりです。白いこなをだして空からおちてくるのです。ぼくは白いので、まっしろしろすけと名付けました。しろすけにはまるい白目と黒目がついていました。はなも口も耳もありません。小がく一年生のざっしに付ろくでついていたシールににてました。
 町の人たちはどんどんふってくるしろすけを笑いながら見ていました。おとうさんがけせらんぱさらんは幸せをよんでくれると言っていたので、きっとそのせいだと思います。
 ぼくも何だか幸せなきもちです。

8月11にち
 きょうは朝から、えんがわにすわってしろすけをみていました。夏休みの研きゅうはしろすけにしようと思ったのです。
 ところがおかしなことが起こりました。しろすけがふってからかぜでねこむ人がいっぱい出てきたのです。テレビでいっぱいニュースが流れて、子どもは外にだしてもらえなくなってしまいました。
 どうなるんだろう。

8月13にち
 まちにはおまわりさんがいっぱいです。しろすけはきれいにされて、まちはすっかり元どおりになりました。かがく者の人たちがしろすけが本当はかびだということをしらべていて、まちをこうきんじょうたいにしたみたいです。安心だねとおとうさんが言ってました。まちをこうきんじょうたいにしていればしろすけはふってこないのです。

さいごの日
 夏休みがおわります。しゅくだいは全部おわってません。でも、ぼくはだいじょうぶです。ぼくはだれにも見つからないように、しろすけをジャムのびんに入れて、引き出しにかくしておいたのです。まいにち見ているうちに、しろすけはどんどん大きくなっていきました。
 きのうの夜、トトロを見たあとに、なんだかねむれなくて、屋根の上からしろすけを少しずつばらまいてみました。暗い夜にしろいしろすけがきれいに見えました。
 きょうの朝、おとうさんが全身カビだらけになって死んじゃいました。かなしいです。しろすけはいまもすごいスピードでふえていきます。きっと明日はぼくが死ぬのでしょう。おしまい。
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