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 手のひらの海に、汐はまた満ちる。それまで待とう、死ぬのは。(皆川博子『ひき潮』より) ―――吉川楡井の狂おしき創作ブログ。

-週刊 楡井ズム-

   

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映画『サマーウォーズ』の欠点、覚え書き



サマーウォーズ [DVD]



凍える季節になってきて、夏が恋しくなってきましたね。
そういうことで、映画サマーwっホーズ

ん、タイピングミスですね。寒さのせいです。

サマーウォーズでした。

1年前だか、いつだったか忘れましたが、TVで1回やりましたね。
で、ちょうど母親と嫁とラーメン食いに行ってて、前半1/4ぐらい見逃したこともあって、あんまりサマーウォーズ押しの波に乗れんまま、終わっちゃったんですよね。
心苦しくもあり、一度はきっちり見なきゃならんなと思っていて、何も考えずに何かをしたい時期にポロンと観てしまいました。

まあ、今さらの更なる今さらではあるんですが、ちょっと書きます。ほんのちょっと。


さてさて、
1度目に観たときの感想を先に挙げておくと、
  • 声、変 (特にヒロイン)
  • 人、多すぎ
  • デジモンじゃん。進化してないじゃん。
  • ばあちゃんてそんなにすごい人なん?
  • 風景、あんまり綺麗じゃないね。やる気あんの?
というようにボロクソ言っておりまして、そりゃ途中から観たらねー、キャラクターも追えなくなるし、声だって違和感あるでしょうしね、仕方が無い!

んで、まあ、まあ、上二つはそういった具合なので、二回目は気にはならなかったスよ。
特に人の多さって部分は、結構描き分け出来てたと思うんで、文句ないっス。ちーッす。

声もね、桜庭ななみッス。文句ないッス。変とか言ってすいませんでしたッス。


でね、冗談はさておき。
風景うんぬんについても、まあ、視聴状況が異なる(前回TV、今回PC)ってのもあるんで、比較にもならんのですが、初見時に思ったのは、風景が絵っぽいなあってのがあって、

OZのデジタルな描写ですかね、あの城とか、モンスターズ・インクを髣髴とさせる追いかけっこシーンとか、アカウント群のモブシーンとか、そういったのは確かに新鮮で楽しめたんですが、
一方、現実のショットとなると、なんか水彩画臭くてダメだったんですよ。
逆に作り物っぽく思えちゃう。

そうそう、前作の『時をかける少女』について触れますと、僕はもう超絶大好きな人間なんですね。
で、あとにも触れますけどポケモンよりデジモン派が自慢の僕ですから、もちろん『デジモンアドベンチャー ぼくらのウォーゲーム』も名作だと思ってますよ。デジモン映画は、以後あれを越えられてないと本気で思ってるぐらい。

まあ、前者も後者も原作とかバックボーンに特別な思いいれがあるからこそ、楽しめたんだろって言われればそれまでなんですが、とりあえずこの二作は、画として凄い楽しかった覚えがある。
それも、デジタルワールドの描写ではなくて、現実の描写なんですよ。

『時かけ』のトリップシーンとか、『デジモン』のバトルシーンとか、そういうことじゃなくて、

『時かけ』の冒頭のキャッチボールシーンだったり、『デジモン』の団地から見える景色だったり、なんでもない現実世界にもある光景が、アニメでしっかり描かれるときの快感なわけですね。


で、この謂いは、映画評論家の町山智浩氏も言ってたり、それこそ細田監督も言っていることなんですが、
『サマーウォーズ』ではそれを感じられなかったなぁと思います。

確かに思い返せば、そんじょそこらのアニメより数倍いいんですよ。動きだったり描写だったり。
でもねぇ、なんか演劇っぽいのね。キャラクターもそうだし、風景もなんか演じてるっぽい。
だから、ああ、きっとOZの描き込みに注力しすぎたのかなぁなんて邪推もしたりして、勝手に補完していたわけですが、二度目に観てもやっぱりちょっと物足りないなあという感は拭えませんでしたね。

季節の変わり目などに見られる、息を呑むような自然の美しさってのを、見たかったですね。
以後十年は記憶に残るであろう夏休みの情景を刻んで欲しくもありました。
まだ『クレヨンしんちゃん アクション仮面VSハイグレ魔王』の冒頭(うろ覚えだけど)の方が、夏だ!って感じしますよ。ね、クレしんは名作ぞろい!

さて、まあ描写云々は受け取り方次第ですから、皆まで言うなということで、

問題はやっぱりばあちゃんですね。
このばあちゃんを受け入れられるかどうか、理解できるかどうかで、作品に対する評価も変わるんでしょたぶん。
で、僕は受け入れられなかった。
初見時によく引き合いに出してたのは、『20世紀少年』ですね。
結局、家族の一員ではない僕からしてみるとですね、あのばあちゃんとその取り巻きは、ともだちと友民党みたいなもんなんですよ。新興宗教みたいなもんなんですよ。
なんでかって言うと、ばあちゃんがそんなに凄いように見えないわけね。

完全に経歴の描写が欠けているんですよ。
ばあちゃんがこれまで家を仕切ってきた経歴、偉い人間に顔がきく所以、そこらへんが何にも描かれずにただこういうことなんですで押し切られてしまうのって、どうなんですかね。

で、まあそこはなんといっても家族ですから、経歴がどうのこうのじゃないって言うのは分かるんだけど、じゃあ果たしてそんな家族って今の時代どれぐらいあるのって話なんですよ。
ドラマ的にご都合主義だとか、そんなことはどうでもいい。
家族を描くんなら幸せな家庭を描けばそれで終わりですか、と。
そのための努力があってこそ、でしょうと。

基本的にこの映画はアナログ世界とデジタル世界の対比が肝なんでしょうが、どっちに対しても馬鹿みたいに受容的で、善意者しかいないし、もう理念に悪が付け入る隙すらないんですね。
で、僕が一番嫌なのは、この幸せな家庭を築く、家族を描く、そのための努力や思いやりが排除されているってこと。それ自体は悪でもなんでもないんだから、描かない意味なんてないんですよ。
だから受容的は受容的とは言え、あり方として受け入れられてるんじゃなくて、こういう世界があってね、だからこれはこれでいいの、という記号をそのまま引用しているに過ぎないんですよ。
引用的ですね、これは。

その中心となるべきが、キーキャラクターの侘助さんなんでしょうが、この男もよく分からんね。
ぶら~っと家を出たかと思ったら、ああう、ばあちゃん、ああ、ばあちゃん、元気、元気、えへえへへへへ(虚飾あります)、って戻ってきてさ。
最初からデレデレだから、ばあちゃんが死んだ後も別にこれといって何もカタルシスないんですよ。
その癖、NASAに認められたからえへえへへへへ、って、お前なめてんのか、おいこら、お前なんか認められるか! 命かけろ、ぼけ!!
コイツがあの家に来るときも、全然緊張感ないし。これ本当にこういう家族がいて、こういう状況になったら、もう観てるのも嫌なほど、ぴりぴりですよ。その十分の一ぐらいしかないじゃないですか。
お前、何しに戻って来たんだー、とかね、まあ、それ言っておけば無難ですよね、はいはーい。



だからね、この映画に欠けているのは努力と、歴史!

家族なんてのは、誰かが作ろうとして作るもんじゃないんですよ。一族の話ではないですよ。どういう血筋でこの家が建ったかじゃなくて、今ここにいる人々がどういう営みを経てきたのか。それが全然分からないから愛着だって湧かないし、へー楽しそうですね、じゃあ頑張って。てなもんですよ。

んで、そもそもね。
一番の最も大きい問題点。
OZがたいしたことないんだよね。
デジタル世界でのアカウント奪取によって、まあ存在証明が不能になり、社会全体にとっても恐怖になるのは分かる。でもさ、アカウント自体はサイトがなければ成立しないしね、で、このOZが驚異的に社会に普及しているから大変なんだろうけど、それがショボイんだよね。普及の仕方が。
今と大して変わらんの。だから全然恐怖とか感じないのね。
ネット銀行、破られるとかさ。情報流出とか、もっと怖いのいっぱいあるでしょ。
それに媒体だって、みんなでケータイぽちぽち、パソコンかたかた、ってだけ。
『電脳コイル』とか、数多あるSFアニメみたいに突き抜けろとは言わないまでもさ、もうちょっと想像力きかせてもらいたかったな。ぼくらのウォーゲームとそれすら変わってないんだもの。
焼き直しなのはいい! 監督がやりたいんだから、いい!
そこだけ切り取って、なんだかねーなんてもう言わないけど、10年近くの幅があって、それなりに現実社会も変わってきてるんだからさ、もうちょっとリアルを見せて欲しかったですね。んー。

だからね、僕は思うんですよ。
これね、二十年後ぐらいに、『サマーウォーズ』の焼き直しをしたら傑作になるんじゃないのかなってね。
三度目の正直ですよ。もう今度は間違いない。
『時かけ』とか『オマツリ男爵』とかそういうのを凌駕した傑作!
ね。うん。


それはそうと、細田守氏の絵柄で、もっとダークなもの作って欲しいですね。
悪・青春ファンタジー。
まあ、無理か。


とりあえず『サマーウォーズ』は中学生ぐらいのときに観たかったです。
ガキンチョのときに。


ということで、今さら『サマーウォーズ』なんかについて語って気恥ずかしい気持ちでいっぱいです。
論旨も珍しいこと言ってないし、洩れてるし、だめだねこりゃ。ごめんごめん。
というか、別にこの映画好きじゃねえから、実際のとこはなんでもいいんだ。
感動した!とか言われてることにやきもち焼いただけ。うん、ゴメン。えへえへへへへ。
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