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 手のひらの海に、汐はまた満ちる。それまで待とう、死ぬのは。(皆川博子『ひき潮』より) ―――吉川楡井の狂おしき創作ブログ。

-週刊 楡井ズム-

   

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『煙火』

[解題]




金不足人手不足と捲くし立てられ、花火大会の警備をやってくれないかと依頼があった。追い返すつもりは端からないのだろうが、大会の三日前おまけに不躾に至急の断りもなく依頼を寄越されたものだから、折衝に来た市職員に社長が厭味たらたらと口説いていた。
 先日、協賛金を頼みに来たのは別の職員、とはいえ実行委員会の役員として来ているわけなんだが、そちらに先を越されたお陰で今日来た彼は倍の説教を聴く羽目になった。まあそれも仕事の内なのだろう。散々つついては翻し、反れては引き返してを重ねた挙句、一時間ほどで社長の説教は終わった。依頼は受けることになった。

 状況が状況だけに、二日間の夏祭りは一日に縮小され、空いた日曜の夕方に花火大会のスケジュールが組まれた。当日うちからは六人が警備に回り、俺も五時半に所定の箇所に就いた。日が暮れ、地元のアナウンサーが喋り、いつの間にか花火大会は始まった。
 娘が生まれてからは毎年顔を出しているが、さすがに観客の波は威力に乏しい。すかすかとは言わないまでも、むしろ気軽に思えるほど隙間が目立つ。去年は分け入るのも容易でなかった堤防の草叢は、件のあれのせいで立ち見が原則だった。ところが誘導棒を振りつつ見回していると、堤防の一角に妙な暗がりが居座っていることに気がついた。そのケがない俺でも誰かが来てるんだなと直感した。しんみりとしたアナウンサーの語りから、各団体が出資した弔いの花火打ち上げに至る。地上へ降る光に観客の表情は照らし出されるが、体育座りをした人影とも見えるあの暗がりは無論それもない。
 鎮魂の花火の〆である市名義の二十号玉が燃えきる頃には体育座りも消えた。大体、今こんな話をすると不謹慎だと言われかねないが、観に来たんだろうなと素直に思う。手前味噌ながら、弔いになってくれればいいなとも思った。
 それこそうちらが出資した五号玉は不発に終わってしまったんだけれども。

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