手のひらの海に、汐はまた満ちる。それまで待とう、死ぬのは。(皆川博子『ひき潮』より) ―――吉川楡井の狂おしき創作ブログ。

-週刊 楡井ズム-

   

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『小便アポカリプス』

[解題]
「ダリオカストロロの城」まで書いているのだから、後ろを書くなら前も書かなければという動機から生まれた作品。しかし、そこにアイドルの放尿などの小奇麗な妄想を扱わないのが天邪鬼たるゆえんか。
話の手触りとしては、牧野修や小林泰三など一世を風靡した(?)電波とホラーとSFの魔術を操る魔人たちの影響を受けている。特に、執筆前後に牧野修『楽園の知恵』を読んでいるのだから分かり切ったことだ。
しかしこれでもだいぶ書くのに苦労した作品なのである。少年の放尿なんて誰が見たいのか、とか、そういう話題ではなく、話の骨子をどう組み立てていくかに苦慮した。結局のところ寺山修司原作『田園に死す』をほうふつとさせる屋台崩しに至るわけで、骨子を組み立てるのも一抹の苦労。
知っていながら苦しんだ挙句、ひょんな気まぐれからさっさと書き上げてしまう自分。ほとほと悩まされる。



「おしっこ、みせてご覧なさいよ」
〈女教師〉は舌なめずりをした。細長い指を少年の腿の付け根に沿わせて、股間に触れるか触れまいかとじらしてくる。溶岩の様にくすんだマニキュアの爪で、くるりと円を描き、しまいにはカサついた黄土色の唇で内股の柔らかい肉に接吻をする。
 個室の外ははげしい雨。急き立てるような酸性雨が屋根を叩いていた。
〈女教師〉も濡れていた。この雨のなか、少年を追いかけてきたからだ。しかし服を脱ぎはしない。水を吸ったブラウスが肌蹴ていたが、その奥は空虚。少年は見せびらかされた秘部から目をそらすに徹した。
「なぜ我慢しているの。漏れるのはつまらないの。一思いに、出してねェ」
 じらされているのは〈女教師〉の方かもしれなかった。少年の関節や皮膚が発する未熟な妖気に飢え、とうとう〈女教師〉の唇が少年の性器を咥えた。本来ならその尿道から液体が滲み出てくるころを見計らい、しゃぶりつくはずだった。しかし我慢がならなかった。少年の強情さに屈してしまったのである。
「ひいのほ、出ひ方が分はらなひほでひょう。見せへあへふ。おひっほほ、出ひ方」
 少年の両足に挟まれた首はままに、体だけがくるりと表裏を変え、自ら服をちぎりはじめる。刺青の様なボンテージ姿になったあとで〈女教師〉は身を捩らした。黒のパンストが湿っていく。少年は思わずパンストを引き裂いた。
「ほう、ひい調子、ほのまま、あなはもおひっほ、出ふのほ」
 まるで蛙の解剖だな、と少年は思った。ひくひくと水を湧き立たせる泉は神秘的だが、それ以上の感慨を持たせるには不十分だ。それよりも奇怪な形が先行し過ぎていて、申し訳ないが醜くさえ感じる。これが父さんの玩具だとするなら、父さんの趣味は悪いとしか言い様がない。
「どうしてみせてくれないのォォォォッッ」
 弾けるように〈女教師〉が吠えた。
「もう、あなた、落第点よ。お仕置き、お仕置きなのよ」
 ふたたび少年の性器を咥える。今度は歯にできるかぎりの力を込めて。ミチミチと音を立て、少年の尻を乗せた便器に罅が入る。食いちぎられる性器を放棄して、少年は両腕で〈女教師〉の背骨を砕く。刹那の間もなく個室は崩壊し、土砂降りが二人に降り注いだ。みるみる雨には朱が混じってきて、これまで強酸で溶かされていた世界の愚物が息を吹き返す。
「そうよ、こうして世界が生まれたの」〈女教師〉の声が響いた。
 少年は一息つく。おめでとう、先生。

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