手のひらの海に、汐はまた満ちる。それまで待とう、死ぬのは。(皆川博子『ひき潮』より) ―――吉川楡井の狂おしき創作ブログ。
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人間界に紛れ込んだフクロウの化身に出会ったら、同じ鳴き真似を返さないといけない―“都市伝説”に憑かれた男の狂気を描いたオール讀物推理小説新人賞受 賞作「フクロウ男」をはじめ、親友を事故で失った少年が時間を巻き戻そうとする「昨日公園」など、人間の心の怖さ、哀しさを描いた著者のデビュー作。
黄昏の列車のなかで、ぼくは目を瞠るほど美しい親子と同席になった。妖艶で饒舌な母親と、うまく舌が回らず涙ぐむ娘。だが母親が急にぼくを誘惑しはじめ、 逃げようとしたとたん、「いか、か、か、かないで、お願い!」娘が腕にかじりついてきた…。物語に潜む“魔”が筆舌に尽くしがたい余韻を残す表題作をはじ め、世界幻想文学大賞受賞作「友の最良の人間」など全11編を収録。
スリーピング・ピル。硬質な輝きを放つこの錠剤が、僕たちを恍惚へと誘うのです。その先にあるのは、いっときの完璧な闇か、それとも永遠の眠りか―。甘くてとろけそうなチョコレート、自らに課した痛みが、美への追求へ駆り立てるピアス…。だれかの愛だけではぐらぐらと不安定な、孤独で崇高な乙女の日常をささえる偏愛アイテムが、物語へと昇華する。単行本未収録の「Notsubo」をボーナストラックとして収録した完全版。
〈「兄さん、あの署名、……あれはどう云う意味。自分の名前を記せばいゝのに。」〉緑に深く埋もれた祖父の家で、ひとり療養する兄の夏織。気怠い夏の空気の中、弟の柊一は夏織の秘密の“隠れ処”を見つけ出そうと川を遡っていった……。