手のひらの海に、汐はまた満ちる。それまで待とう、死ぬのは。(皆川博子『ひき潮』より) ―――吉川楡井の狂おしき創作ブログ。

-週刊 楡井ズム-

   

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てのひら怪談 壬辰: ビーケーワン怪談大賞傑作選


([か]2-5)てのひら怪談 壬辰: ビーケーワン怪談大賞傑作選 (ポプラ文庫 日本文学)


こんなん届きました。



まあ、隠してたつもりはないんですが、このたび6月5日に発売されるてのひら怪談 壬辰に拙作『煙火』が収録されました。

昨年行われたビーケーワン怪談大賞に参加した作品が、東雅夫氏・加門七海氏・福澤徹三氏の選考委員三名のベスト50に選ばれた結果というわけです。


巻末のプロフィール欄でも書き付しましたが、今回の選抜は被災者としての肩書きありきのものだと妄想しておりますので、嬉々とするまでには及びません。
というのも『煙火』は選考委員の助言どおり身近な題材から着想を採り、極めて怪談の手法を演じるに努めた稀な一作でありながら、俺らしさというものに欠けた、すなわち俺自身が面白いと思う要素に欠けた作品であることがひとつ。
一方で、送った三作がすべて、とうに過ぎたあの夏の夜更けに遊び半分で書き散らしたものであるという慙愧の念が未だに心中にくすぶっていることがひとつ。
(『煙火』の元タイトル『鎮魂の華』なんつーのは、考慮が至らなかった部分の代表格。案の定、東氏に一蹴された結果、改題した次第)


1000文字小説の解説で、しきりに怪談は自分に合わないと言い訳していることは謙遜でもなんでもなくて、怪談に触れて数年経つもののいっこうにその面白さが分からない。
歴史の深さ、懐の深さは分かる。
ところが何を読み潰しても、理想的なときめきには出逢えず、ただ「ん~怪奇なり」と思うばかり。
それで十分かもしれないが、俺は不満なのだ。

そんな身ながら、この手のコンテスト、賞の枠から外れているとはいえ最低限の評価は得ている事実。
なんともこっぱずかしいことではないか。
なんとも僭越な構図ではないか。はっはー



とはいってもね、俺みたいな低能凡才物書き志望一個人が、一般に流通している書籍に筆名が載ることなんて夢のまた夢。うれしいことはうれしいですよ。
選んでいただいた御三方には感謝感激アメフラシ、これまで以上に目標とさせていただきとうございます。
ありがとうございました。


元々、吉川楡井なる筆名での活動は1000文字での活動およびその延長線上、ネットでの活動用のもの。
過去某ホラー大賞で使用していた筆名もまた一過性のものであり、まぁそれは余談ですが、これらが最終的な筆名になることはありえません。
つまり吉川楡井という名が流通するのは今般が最初で最後となるでしょう。
まぁ、ビーケーワン怪談大賞(2011年第9回で終了)が再開したときにはきっとまたこの名義は生きるでしょうが、それもまるで雲を掴むような話です。


今はただこのことを糧として、あるいは、こんな偏屈な趣味への没頭を継続するための、周囲に対する免罪符として受け止めるのみであり、
当初からの目標である個人名義の書籍が出せることを夢見て、切磋琢磨を続けようと思うばかりです。


最後に、
日頃から我が最良の読者であり、旦那の脆い心の支柱役を勤めてくれている妻と、
病魔と闘いながらも尚、息子の幸福を願ってやまぬ哀れな、否、否……真に尊き母親への、
至上の感謝を“とりあえず”付記して、報告を了します。

ありがとう。
ほな。



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性別:男性
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