手のひらの海に、汐はまた満ちる。それまで待とう、死ぬのは。(皆川博子『ひき潮』より) ―――吉川楡井の狂おしき創作ブログ。

-週刊 楡井ズム-

   

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『脳を漬ける』

[解題]
文体の長閑さは意識したものながら、脳を漬けるという着想自体は楡井ズムの枠をはみ出していない。だって脳を漬けるんですよ。幾らでもエログロに出来るじゃない。それをこんな形にしたのはそれが最適だからという一言に尽きるが、『短編』向きに書いたと言ってもいいぐらいのアンチユニークさなので冒険の甲斐があったということだ。
さて、脳とは人間の最も身近にありながら最も研究の追いついていない部位になる。この作品こそ無駄なことを考えず楽しんでもらいたいのだが、脳を俯瞰する・脳を漬ける=発酵させるetc.ストーリー上の論理で遊びながら読むと、ドグラ・マグラ的な恍惚に浸れるのではないかと思う。
心残りはアナザーエンドの存在である。本作をはじめとして初期の作品はケータイで執筆している。大体の作品、その最終稿はすべてPCに移動済みだが、アナザーエンド部分のみケータイ(しかも故障したもの)の中に封印されたままである。今回を機会にお披露目したかったが、そのためにはauショップに行かなければならないので、アナザーエンドよりもこっちの方が断然面白いとだけ付加して逃げる。いずれまたの機会に。




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『Ten’ Va Pas』

[解題]
作中でも言及されている同名曲を聞くと、底知れぬ不安と悲哀、恐怖にも似た寒気を感じる。引用した部分はググれば、翻訳が出てくる。作中人物の状況に併せて、ここではあえて翻訳を載せないが、機会があれば探して欲しい。
作品そのものとしては曲のイメージを壊さないようにモダンホラーのスタンダードとした。冒頭からオチに至るまで、既視感の漂うぐらいがちょうどいい。『Ten' Va Pas』の哀しいメロディー・歌声が浮かび上がるように。あまり1000文字としては書かないタイプ。却って新鮮味がある。怪奇の章の折り返し地点に位置するだけに、ある種重要な作品。




『3年2組の河野君』

[解題]
この作品の根幹である河野君自体は元から頭にあり、おおよそこういう形に落ち着くのでないかというアイディアは以前からあった。視覚的なエログロも落ち着いてきた頃合、少し風変わりなものを書こうということで、旧い着想を引っ張り出してきた次第。
少し思っていたものとは違うものの、筒井康隆『姉弟』を意識した(というかパクった)禁断の関係を想起させるオチは、分かりづらい程度が最適かと思う。
小生と同郷出身のホラー小説賞受賞作家・飴村行氏のデビュー作『粘膜人間』にも河童が登場する。無論、関係はない。





『蠅とサイダー』

[解題]
本当なら蠅の王様をどどーんと登場させたいところだったが、その片鱗を変哲のない一匹の蠅に視るという趣向を選んだ。ただし少々勝手が違うのは、作品自体がベルゼブブ誕生の叙事詩になっていること、とでも言おうか。
地獄への言及は少し蛇足な感じが否めない。物語を期待せず想像力の海に浸かっていただければ蠅の歌も聞こえてくるかと思う。





『細君分裂』

[解題]
着想だけがあった物語を認めようとすると、オチの付けかたに難儀する場合がある。本作がそう。加えて、タイトルも定まらないと来れば難産も難産。紆余曲折あり、このような形に落ち着いた。
いわゆる作中の方程式が成立しているかどうかは不確かである。これで正しいのか、作者としても結論づいていない。だが愛情というものが教科書を持たぬ以上、言及は無意味だと悟る。
ちなみに妻の増殖は作者の願望ではない。当然ながら。






『みぞれまじりの……』

[解題]
また柄にもないものを……と言いたいところだが、悪魔主義はフィクションの枠をはみ出し、罪なき少年少女をもその手にかける。死は唐突。現代の人間関係は、果たして何処から何処まで保障されているのか。そんなことが時折頭をかすめ、それが作品となった。
たまにはこういう作品もいいだろう。自己への戒めとしても。





『カレイドスコープの悪夢』

[解題]
レンズの中の異形に魅了されると来ればオブライエンの『金剛石のレンズ』や、壜の中に小さな異世界を視る早見裕司『逃げ水姫』など御伽噺めいた作品ばかり目に映る。本作では、万華鏡という異世界への鏡を覗きながらもあくまで現実から解放されない、とても冷徹な話を目指した。情熱的な紅の血潮を振り撒きながらも、作品の根幹に根付く冷ややかな視線。そこに万華鏡めいたプリズムを見つけていただければ幸い。
なお、作中で“秘密”に振られた“タプ”なる振り仮名は、小松左京の同名作品から拝借している。





『生首灯籠』

[解題]
視点の交錯を意図して書いた。五覚のうち実に四覚が首の上に集中しているように、あるいはそもそも脳髄がそこに置かれているように、首から上の存在が人間を人間足らしめる。ただし二つの視点は二つの存在とイコールではない。
元は一つの視点(一つの存在)が乖離することで、二つの次元を介し、やがて一つに重なることで、物語上の収束を演じている。本来パラレルワールドはそこまで簡易なものではないが、怪奇幻想視点から見ればこうなるとの回答。
雰囲気からは怪奇色が前面に出た形となっているが、アイディアの風格を優先して奇想の章への収録と相成った。ストーリー上でも、恐怖を意識しながら浪漫に落ち着く点、怪奇の放棄と見て取れる。






『ボタニカル』

[解題]
ボタニカルと題すると、“じゅせ~~~い(受精)”で有名な『ビーストウォーズリターンズ』のボタニカを連想するのだが、それはまた別の話。
着想の大元は作中でも言及されている通り、平成ゴジラの中でも地味ながら特異な存在感を放つ植獣ビオランテである。よって作中の娘の名は英理加とでもしておこう。
作品そのものの評価はアレながら、ビオランテ自体の造型は非常にフェイバリット。欧米B級ホラーチックな植獣形態のゴツさも良いが、花獣形態のおぞましさと来たらもう……興奮!
特に芦ノ湖に立つ場面は薔薇の造型からして耽美であり驚々しい、日本人ならではの鳥肌感覚に襲われること必至。
本作は着想こそビオランテの換骨奪胎だが、その辺の怪奇色を含めなかったのは意図ながらも心惜しいものが。けれども移植バンクならぬ植物バンク、植物人間ならぬ植物人間を描いた、お気に入りの娘である。






『悲し火幻想』

[解題]
『浸蝕』と同じくmixiでの企画、同じ書き出しによる1000文字小説に寄稿したもの。
「雨なんて嫌いだ。」の一語から乱歩のパノラマ島奇談を連想するのは我ながらどうかしていると思う。特に石井輝夫監督のミステリー映画『恐怖奇形人間』大好きな自分としては、原作の影響が色濃いのは意外だったりもする。
とは言え、戦争の赤紙を意識しているのは時節ながら、書くきっかけになったのは別のものの影響で、加藤元浩氏の推理漫画『Q.E.D.』の28巻にまさしく『人間花火』という話があって、それに感銘を受けたからである。内容は拙作と全く異なるのだが、お気に入り漫画『Q.E.D.』の中でも五指に入るお気に入り。ミステリーが好きで怪奇物、サイコ物が好きな方はチェックされたし。






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