手のひらの海に、汐はまた満ちる。それまで待とう、死ぬのは。(皆川博子『ひき潮』より) ―――吉川楡井の狂おしき創作ブログ。

-週刊 楡井ズム-

   

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『魔囚壹景』

[解題]
bk1怪談大賞に投稿したものはこれを800字にブラッシュアップしたものである。どちらがいいかはどちらでもいい。ここで、bk1で貰った感想を引用することにする。
この作品を読んで、少し前に純文学の世界で、一大旋風を巻き起こした若合春侑女史を想起したのは、私だけではあるまい。
この手の作品は、擬古文という一言でくくられがちではあるが、描き出す時代に合わせて文体表記を換えるという若合女史の技法を逆手に取り、時空のゆがんだ 二つの映像を左右の目に同時に見せることで悪夢の3D映像を読み手の脳内に結ばせる。廃墟に流れた長い時間と、そこに取り残された二つの記憶。我々が見て いるのはきっと、遠い未来ではなく遥かな過去。読み手もまた、いなくなってしまった人々の記憶でしかない。
何とも大仰な感想で、ああなるほどなあと作者自ら気付く部分もある。テーマは《吊るされた男》ということで、角川タロットボックスへのオマージュとしてある。1000文字小説としては比較的初期の作品ながら、方向性は変わっていないようだ。


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『虹鯉の記憶』

[解題]
小学校の国語の教科書に『紅ごい』という作品が掲載されていた。十数年経って、樋口明雄氏『メモリーズ』を読んだら、それを思い出した。コイキングがギャラドスに進化するように、鯉は滝を登ると龍になる。虹との関連がうまくいかなかったのが難点。そもそも根っからのインドア気質である小生が、このような作品を書くこと自体、稀。





『エレジィ』

[解題]
アルラウネというと、聖闘士星矢の冥闘士アルラウネのクイーンの冥衣の影響が強すぎて、いわゆる親指姫と重なってしまう。故に、デジタルモンスターのアルラウモンを初めて見たときはこれのどこがアルラウネじゃいっと癪に障ったが、後にマンドラゴラと起源を同じくしていると知り、無知を恥じた。
石川楡井というペンネームにした途端、アルラウネやマンドラゴラなどの樹木の妖精を好むようになった。
なお、一番のお気に入りアルラウネは成田良悟『ヴぁんぷ!』に登場するセリム・ヴァージェスであることも書き添えておく。





『供物連鎖』

[解題]
mixiの企画『蝉が鳴いている。』からはじまる1000文字小説のため執筆。
時期が時期だけに猟奇の章:5『悲し火幻想』と同じく終戦を元に着想。どこか北と名のつく国との鬩ぎ合いが想起されるが、大して興味はない。死ぬときは死ぬだろう。テポドンであっても天災であっても。というか北は多分テポドンを撃たない。そう思おうじゃないか。
犠牲と食物連鎖を綯い交ぜに考えるのは教育に悪いが、実質似たようなものだとブラウン管が訴えている、そんな昨今。





『しろすけ』

[解題]
夏休みといえば『となりのトトロ』か『火垂るの墓』。『火垂るの墓』テーマはもう『供物連鎖』とかで書いている。ならば、『トトロ』……そんな風にして着想に及んだわけではない。
イメージソースは『地獄先生ぬ~べ~』のケセランパサラン登場の回。
最後の「おしまい。」をどういう風に取るかでこの作品の意義も変わってくるし、存在にも関わってくるだろう。宿題に追われる小学生の頃に戻って考えれば、少しは真の姿を捉えられるかもしれないが、実は作者である自分も分からないww




『王国の風』

[解題]
『万魔殿』の項にて無国籍なファンタジーが好きと書いたが、一方でエキゾチックなファンタジーも好き。『王国の風』はそういう意味であまり好きではないファンタジーを書いた。どこか西洋版『千と千尋の神隠し』とも呼べそうなワンシーンの切り出しだが、意識したわけではない。また、《百年庭園》という呼称は、怪奇幻想短篇『三通のメルヒェン』と共通しているが関係はない。
mixiでの企画『風が吹いた。』からはじまる1000文字小説のために執筆した。




『火車の顔』

[解題]
怪談を書こうとして、途中でこのままオチがない作品を書こうとした結果のような気がする。
というか一番怖ろしいのはこれをいつどんなタイミングで書いたのかが全く思い出せないこと。いや書いたこと自体は覚えてるのだが、それがいつ例えば他の1000文字小説のどれの次に書いたとか、何ヶ月前とかを全く覚えていない。
そういうわけで特に思い入れはない。こういうパターンも実に珍しい。





『紅葉散ル園』

[解題]
作者の思い入れがそのまま読者に伝わることはない。それが創作の摂理。
テーマはアート。本作ではパントマイムを用いている。作者は静的な表現の刹那に、永劫の輝きを見る。しかしそれが読者に伝わることはない。芸術とは評価されると同数の無評価を孕んでいる。評価者の一秒は、無評価者の一年に、そして表現者の一生に値する。生まれながらの表現者は表現せずとも表現になり、その所作すべてが芸術になる。例えば、一生を終えたとき、遺された意図しない表現も評価の対象になる。評価者と無評価者の絶対数が多ければ多いほど。
誰一人に見向きされずとも、小生は本作を愛し続ける。
オフィーリアの名は生ける屍を描いた著名な絵画、その基になった説話による。





『万魔殿』

[解題]
個人的な嗜好として無国籍感があるファンタジーが好き。異国情緒が幻想性を掻きたてることも無きにしも非ずだが、醸し出す風情はやはり幻想の湯気であることが望ましい。本作の場合はモザイクじみた設計になってしまったが、実際の塔の造型と比較するためにこれぐらいが限度だったかのように思う。
作品の主となる存在はまるでギャグ、まるでチープな子供だましに過ぎない。だからこそファンタジーを忘れた大人への成長という意味で、“永遠の夢”という単語を使用した。
『月夜のでんしんばしら』の叙情性には到底敵わないが、これはこれで地味に気に入っている。





『万華』

[解題]
書いたものの一切読み直す意気の上がらない作品がたまにある。断言しよう、石川楡井作の1000文字小説中、最も中身のない最低な作品である。なんだよこれ、『カレイドスコープの悪夢』と被ってるじゃネエかよ。なのに結局そういうオチかよ。っていう。
だがたった一つこれをお蔵入りに出来ないのは、とある点で『死せる美術のためのサクリファイス』や『月下』等のエログロ諸作品と共通テーマを兼ね備えながら、『脳を漬ける』にも通じる切り口で描いた別物と個人的には思うから。単なるヴァリエーションでは片付けられない肉薄の精神が宿っている。そんな作者の奢りにより、このタイミング・この位置で密やかに掲載することにした。





更新情報

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プロフィール

HN:r0bot21th
年齢:37
性別:男性
職業:虚無員



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