[解題]
『○○の女神』というタイトルで真っ先に思い出すのは、筒井康隆『時の女神』以外になにがあろうか。『虹の女神』という題の映画があったろうが未観賞である。もっぱら前者から本作へと連なるネーミングニュアンスを崩されたくないからだ。
と仰々しく語ったところで本作の解題にはなるまい。本作は『時の女神』という作品の要素をなにひとつ受け継いでいないからだ。切なさ、という点では意識したかもしれないが。
本作で挑んだのはかつての自分である。まだ小説を書きだした頃の自分の文体を振り返ると、ある意味で清らかな透明度を感じることがある。こういう文が書けたのか、という驚きはそのまま、今は書けなくなってしまったという絶望を呼ぶ。しかしそれさえ意のままに操れてこそ文士であろう。その意気に任せるままに書いた。結果はご覧のとおり。勉強が必要だ。
璃子という名前は、透明度のある話で真っ先に思い浮かんだ本多孝好の初期短篇『瑠璃』(『MISSING』所収)から得た。
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