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 手のひらの海に、汐はまた満ちる。それまで待とう、死ぬのは。(皆川博子『ひき潮』より) ―――吉川楡井の狂おしき創作ブログ。

-週刊 楡井ズム-

   

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『貌』

[解題]
『血の花嫁』、『皿の花嫁』にしろ実録猟奇殺人に、創作者として以上の興味をもっていると白状しよう。とはいえそれは珍奇なことではないのだと思う。普段、この手の創作を毛嫌いする人間だってニュースには飛びつくことだってままあるのだ。
「貌」というタイトルには、物事の表面という意味を宿らせている。だが、それがすべてという考えもある。
それはそれとして、貌は時間や出来事の干渉を受けて変わっていくもののメタファーでもある。つまりは事件の表層・真相をほのめかす。さらには前述したような自然発生的なものばかりではなく、何者かによって殴打された場合、見るも無残に変「貌」してしまう。その人が誰なのか判別もつかないぐらいに。貌とは、そういうものなのである。
さて、本作については背景の所在から、これ以上のことを語るのは避けたい。
それは曲がりなりにも一般住民として生活している自分への、最低限の礼儀だ。これを度外視してしまったら、ほんとうに創作におぼれ人間とやらをやめなければなるまい。それはそれでいいことだろうと、さらにもう一人の自分がほざいているが所詮は我が内心で交わし合うやり取りである。胸骨の裏に閉じ込め、墓場まで持っていこう。
それが、数多いる被害者への、最低限の礼儀だ。



 今日午後五時ごろ**市郊外の空き地で、死後数週経過した遺体が見つかった。二〇~四〇歳の女性で、警察当局は所持品などから身元特定に急いでいる。(十一年三月**日付 東都新聞)

 先週**日に発見された殺害女性の身元判明。都内の大学生二十歳。一か月前から連絡とれず。(十一年三月**日付「あっとニュース」公式ツイート)

 **さんは観光目的に**市を訪れたといいます。そんな彼女にいったい何があったのか。彼女の通う大学の関係者は彼女について……「とっても感じのいい子で、会うと挨拶してくれたりして」「成績は優秀でしたね」高校時代の同級生は……「ショックです……。ほんとに(言葉につまる)今年の夏に同窓会しようねって」(十一年三月**日付 東都放送「速報ゴゴジジ」)

 遺体からは男の体液(つまり精液のことネ)が見つかったらしく、強姦の疑いもあるらしい。肩の関節が外れていたっていうからそれだけ強い力で押さえつけられたってこと。もー反吐がでるッ。世界中の強姦魔は死刑なんかじゃ足りないッッ。チ○コぶった切って生きながら鳩のえさにさせたーーいッ。被害者の方にはご冥福お祈りします♪(十一年三月**日付「女の敵さらしブログ」)

 頭骨、脊椎、胸骨、腰骨の一部に銃創らしき箇所あり。(検死調書付記)

 鎖骨にヨダレついてたんだって? てことは骨をしゃぶったってことじゃねえか・・・(某掲示板)

 私の夢は看ごふさんです(三年度**小学校卒業文集「実り」)

 ごめんなさい。**くんとは友だちでいたいので付き合えません。(私信)

 遅くなっちゃいましたっ。友だちと行く旅行の準備で忙しくて。来週には帰ってくるのでまた連絡するね←(十一年三月**日付 送信メールBOX)

 これもここだけの話。例の**の女性殺害事件、捜査難航の理由は遺体にのこされた体液。なんとその六割が特定できない未知の物質なのだという。信じるか信じないかは貴方次第……。(十一年四月**日付 「U星をたずねて」)

 この物語について書くには十年前のあの事件について触れざるをえない。(中略)被害者は小学校時代の同級生だ。(中略)弔いにもならないだろうが、頭を離れぬ生前の彼女を思って書いた。わたしも、彼女のことを守れなかった人間のひとりなのだと思(二十二年八月刊行『ブラドネメシス』跋)

 おっとが おかしく なりました 
(作家****の自宅に残された妻の置手紙)

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