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 手のひらの海に、汐はまた満ちる。それまで待とう、死ぬのは。(皆川博子『ひき潮』より) ―――吉川楡井の狂おしき創作ブログ。

-週刊 楡井ズム-

   

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『即興詩人』

[解題]
タイトルからアンデルセンの長編小説を思い起こす読者は多いだろうが、その想像どおりのものを書く作者ではない。よい意味でも、よくない意味でも。
本作は、作者の始まりであり終わりでもあるのかもしれない。つまるところ、《猟奇の章》、エログロに対する作者の決意表明とも言える。すると、『枝折の怪』とテーマが共通しているようにも思える。
そう、作者にとって小説を書くという行為はそんなものなのだ。そんな自虐でもあり、あからさまなアイロニー。


 女を檻に閉じ込めてみたいので、檻から造ることにした/檻の格子に手を嵌めさせて、女に臀部を突き出させる/萌黄色にチェックの入ったスカートを捲くし上げ、ひ弱な腰履きに指をかける/引きちぎって、曝け出された女の和毛もない柔肌に、爪で痕をつける/肉が震える、その感触を、掌でしかと味わったのち、股の付け根に埋もれた襞と縦穴に触れる/蕩けだした液が、陰毛の隙間に肌理細やかな泡を立たせて、ぱくぱくと餌を欲しがる/糞まみれの青バナナは、女の穴より幾らか太い/躊躇いがちに、少しずつ押し付けると、腰を引き攣らせながらも、女は、女の下口は、ずずずとバナナを頬張っていった/女がうううと呻き声を上げたのは、檻の外にはっきりと月が

「どうじゃ、ケンの調子は」
「すごい才能ですよ。こりゃあニュースになる」
「隠れて文学賞に送ってみたらどうじゃ。もっと騒ぎになる」
「そりゃ名案だ。てことは、許可していただけるのですね」
「うむ。最新作を見て決めよう」

ぼくはツバメ/羽根に穴のあいたツバメ/巣立ちから間もなく野良犬に噛みつかれて、傷ついたツバメ/風に乗ることも、羽ばたくことも出来ないツバメ/道端に落ちて、ひょいと持ち上げられた掌はあたたかくて、ぼくは眠ってしまった/気がつくと、狭苦しい部屋のなかで横たわっていた/「おかあさん、ツバメが起きたよ」/男の子が覗き込んでくる/ぼくは男の子の膝のうえに座る/きいこきいこ……/男の子は車椅子/両足が両足ともそっぽを向いている/人間の言葉は分からないけど、足が不自由なのだと分かった/「僕はずっと歩けないままなんだ」/男の子が言う/ぼくはある朝、男の子が目覚めるのを見計らって、翼を広げた/穴が開いてても飛べる/それを伝えたくて、羽根をふった/ぼくの体は重く床に落ちる/羽根を濡らしたのは、男の子の涙だった/よかった、車椅子を置き去りにして、君は歩けたんだよ/ぼくを助けるために。

「こちらにケンくんがいるのですね」
「ええ。ケン、入るよ」

私は実験のためにPCを与えられた/世の中の汚らしい、それでいて蠱惑的な女体、殺戮、拷問、鬼畜なるさまざまな行為が私に閃きを与えてくれる/女の肉を食らいたい/体液を啜り

ケンは手早くデータを保存し、ワープロソフトを閉じた。
「こちらが動物園にすむ天才作家、ケンくんですっ」
アナウンサーの声に意気揚々と、PCの前でバナナを頬張るオランウータンがいる。
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